The Door to Hell

 the door to hellとはよく言ったもので、要するに地獄の釜のような煮えたぎる火山口のことである。


 灼熱の溶岩で彩られたそれを恐ろしく思う人もいるだろう。けれど私のような一部の人間にとっては究極の美であり、救いであり、システムであるのだ。


 愛好家、と言えば聞こえがいいかもしれない。火山口愛好家。まあ世の中にはそういう人もいるよね、なんて声が聞こえてきそうだ。


 しかし私にとっての火山口はただ愛好するためのものではない。それは地獄の口なのだ。要らないものを脳内でそこに捨てる、想像をする。するとその要らないものたちは地獄でくつくつと煮られて溶けてまとまりひとつになる。そうするとそれはもうかつての要らないものではなくなるのだ。


 私はいつもどおり「the door to hell」で検索し、出てきた画像を幸せな気持ちで眺める。


 夢、要らない。

 学校、要らない。

 友達、要らない。

 家族、要らない。


 全部ぽいぽいと捨てて溶かしてひとつの大きな塊にして、その名前のない物体と、私と、彼だけが世界に残ればいいのにな。


 そんな事を考えていたバチが当たったのかもしれない。地獄の在りようを勝手に決めるなと、そう言われているのかもしれない。


 死後私に言い渡された仕事は、彼の犯した大罪を浄化するための火山口を岩で塞ぐことだった。


 やはり救いだったのだ。


 私は岩を背負いながら、永遠に続くかのような幸福な気持ちで山を登った。

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