第9話 穴
トレイタが見えなくなるまで走ったハルタとエレナはついて来た五匹のサドントカゲを倒す為に立ち止まり、戦闘準備に入る。
「エレナに任せっきりになっちまうかも知れねーけど、とりあえず頑張ってみるよ。」
形だけだが、剣を構えて、サドントカゲに向かう。
「おらッ!!」
渾身のの力で剣を振り下ろす。が、サドントカゲの硬いトゲに敗れ、剣先が砕ける。
ハルタは慌てて距離を取り、トカゲを見る。
「トレイタの時に見ていて何となくわかってはいたが、こんなに硬いのかよ……。」
剣を納め、ハルタは闇のマジックリングを使う。
サドントカゲの下には漆黒の沼が現れトカゲ達を飲み込もうとするが、四匹はそれを逃れ、明らかに次の攻撃を警戒している様子だった。
「警戒してる内にエレナの魔法でやっちまえ!」
「わかりました。フラ・ブレイ!」
エレナは魔法名を唱えた後、手を勢いよくトカゲがいる方へ向ける。
すると次々にトカゲのトゲの隙間から大量に噴き出す。
「す、すげー。フラって言ったから多分風属性なんだろうけど何使ったんだ?」
以前から魔法の勉強をし、最初の言葉で何属性の魔法を使っているかわかってはいるのだが、今のはどんな魔法なのかわからなかった。
「簡単に言うと風の刃。トゲの隙間に入り込み、そこから風で切り裂きました。」
「凄いな……。敵に回したくないタイプのやつだな。」
そんな事をされたらハルタなんて、簡単に粉々になってしまう。
怖い想像を振り払い、目の前の敵に集中する。
「倒せたのは二匹、残りは後ニ匹か。ちゃっちゃとやっちゃってください。エレナ姉さん!」
「もう丸投げですか……。フラ・ブレイ!」
さっきと同じ魔法を唱え、残りのサドントカゲを切り刻む。
「–––––終わりましたね。トレイタさんの所に戻りましょう。」
「あぁ。そうだ–––––なッ?」
言葉を終える瞬間。腹に激痛が走る。
「あっ––––え?」
恐る恐る自分の腹部を見るとそこには大きなトゲがハルタを貫き、大きな穴が出来ていたのだ。
「がふぁッ!?」
口から血を吹き出し、膝を地につける。
「ハルタ君!?」
何故、傷を見た前と後じゃあ、痛みが違うのだろうか?
「がばっ……!あ、があああぁぁぁッ!!」
「ハルタ君!!」
誰かが何か言っている気がするが、何も聞こえない。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
徐々に視界が暗くなっていくのがわかる。
いやだ。もう死にたくない!死ぬのは怖い!!
「あっ–––––」
もう声が出ない。ただ、痛みと共に死を待つだけだ。
ハルタの目に最後に写ったのは、涙目で慌てるエレナと、一匹のサドントカゲだった。
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