一章 屋敷での激動

プロローグ

「………やっぱ、やるしかないのか。」


 ハルタはまだ使える左手で地面に落ちていた木の枝を掴む。


 先端が尖ってて人を殺せそうだな。


 荒い呼吸をしながら、ハルタは枝の先端を自分の喉に向ける。


 怖い。でも誰かを失う方がもっと怖い。


 お人好しで素直で、そして臆病なアリルを–––大切な人を護る為に、ハルタは覚悟を決め、決心するように言葉にする。


「俺がお前を救ってやる」


 臆病なアリルを外へ連れてってやる。



 ハルタは木の枝を喉に突き刺す。

 喉に激痛が走る。


 痛い。でも、躊躇いは無い。


 さらに奥に突き通し喉から大量に血を吹き出す。


「ハルタ!!?」


 大切な人の声が聞こえる。悲痛に満ちた声だ。



 待ってろ。

 俺が必ず救ってみせる。


 今度は心に誓い、海堂春太カイドウ・ハルタは死んだ。

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