第37話 空箱のメリークリスマス

いつもより念入りに髪をとかす。


とびきりの笑顔を鏡で確認して


お酒と人間の欲望を浴びて


両手いっぱいに

プレゼントを抱えて

鍵すら開けてくれない人の家にいく。


余り物のケーキを冷蔵庫にしまう。


くわえタバコの人に

暖かそうなマフラーをプレゼントする。


何か暖かそうなものを期待して


精一杯笑って

メリークリスマスを告げる。


マフラーの感想もなく

その人は体を触り


排泄のようなセックスをして眠る。


シャワーで声をかき消しながら


情けなくて泣く。


キッチンへ行き

冷蔵庫にあるケーキを取り出して

ゴミ箱を見ると


空になったケーキの箱と

口紅のついたコーヒーの缶


眠るその人の顔をみて


私は着替えて帰るんだった。



私には、可愛い顔も

素晴らしいスタイルも

聡明な賢さも

上手な歌声も

ピアノも弾けない。


私には何も無いからね。


空っぽの箱。

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