星の庭

星守 灯夜

序章

この世界には人の数だけ『物語』がある

歩んだ数だけの物語がある

喜びの数だけ

悲しみの数だけ

思いの数だけ


幾千、幾億もの物語がある

それこそ

この宇宙に瞬く星の数よりも多くの物語が


少年は願った

物語で見たように誰かと

心を通わせたいと


強く強く『焦がれた』


しかし少年の声はどこにも届かず

どこにも触れられない


何万、何億光年という距離があるのだから

届きはしないのだ


強く焦がれれば焦がれるほど

遠く遠く過ぎ去っていった


少年の声は発すれば輪郭を失い

形をなくして消えていく

手を伸ばせば何にも触れられず『希望』すらつかめない


全てをあきらめた頃


届かないそれらを

いつしか少年は『星』と呼ぶようになった


あきらめたはずなのに

涙がこぼれた

本当は悲しくて悲しくて仕方がなかった

しかし少年はには誰かに伝える手段をもってはいなかった


少年の感情はどこにも行けなく消えるはずだった

言葉は少年の頬を伝いキラキラとした『感情の欠片』となった

涙だけじゃない

少年の周りには少年が発した言葉が

感情の欠片になっていた

見渡せば自分だけじゃない人の感情も

沢山落ちていた

一つ拾い上げ手のひらに輝く欠片は

儚く孤独で優しさに満ちていた


もしかしたら

欠片をたくさん集めて紡げば

僕も『星を作れるかもしれない』


星を作れば

いつか思いは伝わるんじゃないか?


直接『言葉』は交わせられなくても

直接『心』を通わせられなくても


もしかしたら誰かに

見つけてもらえるかもしれない


感情の欠片を少年は


『星の欠片』


と呼ぶことにした


そうして少年はどこにも行けなく消えるはずだった

『星の欠片』を拾い集めるようになった

それが唯一の少年の『希望だった』



これははある星に住む

孤独な少年の『物語観測所』


それははある星に住む

孤独な少年が紡ぎだす『物語』


『星の庭』


そしてあなたの『物語』

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