第22話 古代禁呪

「私は長崎奉行所の山藤清次郎である。」

「薩摩と長州に忍ばせておった密偵の報告により、貴様らを連行する」

「神妙にいたせ」


「おい貴様! それは俺に向かって言ったのか?」

桜の精霊で人知の及ぶ存在ではないトキには、ムカついた言い方に聞こえたようだ…


と同時に龍馬が声をあげた。

「これは、長州と薩摩の同盟証書である」

「そうなれは幕府は必ず倒れる。 そして新しい時代が始まる」

「ここで捕まえても意味がないがあ」


と言って無防備に近づこうとした龍馬…

その時!!


「パーーーン!!」

甲高い爆発音と共に、龍馬のすぐ脇からヒュンという音がした。

奥の山から無数の鉄砲隊にも狙われていたのである。


「死にたくなければ、むやみに動くでない」

「万が一の時は殺しても構わんとの仰せである」


山藤とその部下たちは持っていた槍を突き出すと、一斉に龍馬たちを取り囲んだ。

しかしサラは、別の意味ですご~~~く嫌な予感がした。

トキに首にも槍の刃が5センチと離れずあてがわれていたのである。


「貴様ら、人間の分際で俺に刃を向けるとは… 命がいらんらしいな!!」

トキはスロームの魔法を唱えた。


首にあてがわれた槍を時の杖で跳ね返し、その場からスッと浮いた。

それを見た山藤は…


「このもののけめ! 撃てーーー!」

と山に隠れている鉄砲隊に号令をかけた。


離れた山でチカっと光が発した瞬間、トキは「タイムテレポート」の呪文を唱える。

フッと消えたトキの姿の後に、ヒュン、ヒュンと何発もの弾が通り抜けた。


トキは鉄砲隊の真上に瞬間移動すると、鬼の形相で魔法を唱えた。

「タイムショック!!」


これは1分の間、5秒ずつに1問クイズが出され、正解が3問未満だとトルネード…

(なわけないです…ゴメンなさ~い)


昔のクイズ番組のような可愛い名前とは裏腹に…

時空を歪め圧縮することにより、反発する力を利用して大爆発を起こす…

時の魔法の中でも、「古代禁呪」と呼ばれる、古(いにしえ)の大魔法であった。


「グーーーン」

辺りの空気が蜃気楼のように歪んだかと思うと、中心からカッと閃光が走る。


「ドーーーーーーン!」

凄まじい音と共に、山の麓に隕石が落ちたかのような穴がぽっかりと開いていた。


「ブル…」

この場にいた誰もが、あまりの威力に震え上がり放心状態であった。


「こ…こんな力がある人だったなんて…」

「こ…怖い…」

ガクガク…サラも恐怖で足がすくんでいる。


トキはスーと空を泳いでくると山藤の前で立ち止まる。

山藤は顔をひきつらせ、言葉すら出ない。


「小僧、俺を怒らすとどうなるか…少しは分かったか」


山藤はブルブルと震えながら何度も頷くと…

残った部下を連れ走って逃げていった。

途中、何度も何度もこけながら…


「ふ~~ 魔法を使い過ぎて腹が減ったな…」

トキはそう言うと、何事も無かったかのようにそそくさと船に乗り込んだ。


しかし、龍馬・サラ・ジョージは放心状態が続いていて…

しばらくの間その場を動く事が出来なかったのであった。


2度とこの男を、本気で怒らせてはいけない…

誰もがそう思ったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る