第35話 ワイバーンと戦った日

「…………っ」


 僕は、ある事実に目を見開かせる。それは、生存者の数について。一度スキルを使って生きている人を探した見たのだけど……。


 ……100人だった。千人は……必ずいたはずなのに……。こんなにも近くにいるのに、守れないのかよ。最悪だ、僕は。


 こんな簡単に人の命が消えることに、呼吸が困難になり始める。落ち着かないと、そう考えていても、症状は悪くなるばかり。


 しかも、付け加えるとほとんどの人の能力が9割レベルで減っているのがわかる。逃げようとしている人を見ると、言葉を考えずに言うとナメクジ並みに遅かった。速さまで9割レベルで減っていくのはまずいな。


 なんとか佐藤先生たちは生きることができていたようだけど……もしかしたらあの4人のなかに守る系スキルを持っている人がいるのだろうか。それに、佐藤先生たちは9割も減っていないよう。


「まぁ、人のことばかりを気にしたらだめだよな。だって、目の前に……ワイバーンがいるから」


 そう、目の前にはここで学校の回りを飛んでいるワイバーンがいた。隠密能力を使っているからばれてはいないようだから良かったが。


 と、気を抜いたときだった。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ま……まさか……目があった?


 やばい……レベルが上がったからとはいえ、この見た目には勝てない……スキルなんかじゃないのに……恐れてしまう……!!


 やばいぞ…やばい……


 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!


 あれは……さすがに下克上とか言っても無理がある! オーガの時よりもさらに格が違うってのに!


 どうすれば勝てる……? なにか……なにか、方法があるはずだ。どんなに力で劣っていても、なにか光がないか、探ってみる。


  攻撃手段は生活魔法……だとマジックポイントを使うことになって結界がはやく切れてしまうから使えない。というか、あまり使いたくない。


 それなら、アイテムボックス……そうだ、アイテムボックスか! ここは学校だ。だから、いろんな大きいものが集まっている! それなら、アイテムボックスのなかにいろいろといれてあのワイバーンに向けてぶつければ……!


 でも、問題はワイバーンの攻撃を避ける手段なんだよな。攻撃をいちいち何度もくらって、ダメージが入ってしまうと攻撃どころじゃない。


 相手はワイバーン。攻撃も受けながら攻撃をする……そんなの、無理だ。


 考えろ……僕……なにか、僕の能力の裏に、攻撃を避けるような能力があるはずだ!


 なにか、なにか、なにか……。


「……そうだ!」


 見つけた……相手の攻撃をする時間を! そして、相手の攻撃内容を知る方法を!


「《空間探索》」


 そして、僕はそのスキルを使った。このスキルは、あの《探索》の上位互換というやつで、なにであってもたいていのものは探すことができる。


 それは……魔力や技であっても。


 でも、実践では初めて使うから、ちゃんとできるかは不安なんだよな……。


「《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》《アイテムボックス》」


 僕は、学校に何個もおかれている車……というより、もはや廃車を何個も収納し、また他にもいろんなものを入れ続けた。


 よしっ、これで準備はできた……!


「ふぅ……よしっ!」


 僕にはアイテムボックスくらいしか使えないし、ダメージも入らないだろう。けど、それなら、それを何度も使い続けてダメージにすればいい!


「《アイテムボックス》!!」


 そして、今度は入れるのではなくて、アイテムボックスに入っていたものを出してワイバーンにぶつけた。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 なんだよ……予想はしていたけど、ダメージが全然入ってない……。さらに、それの影響で癇に障ったようで、怒っている……。


 あっ、ワイバーンが攻撃しようとしているのか?

 ふと、変な感覚が僕の中をぐるぐると回っていることに気付く。こんな感覚になるのか。


 この……かんじは、広範囲のブレス? やばっ、こんなこと考えている暇に、ここからはやく逃げないと。


 事前に察知するというスキルによって、僕はなんとか広範囲の攻撃でも簡単に避けることができた。


「避ける手段は一応大丈夫。でも、攻撃手段はあったのはあったんだけど、それはほとんどダメージが入らない」


 こうなったら……マジックポイントを攻撃にも使おうか。でも、そうすると時間が限られてくる。そうだ、ナビゲーター、マジックポイントを使ってもいいからいい攻撃手段ない?


《えーっと、攻撃手段でしたっけ。ワイバーンにダメージが入るあなたのスキルですよね? えーっと……ありました!》


 えっ……あったの!?


《はい、それは???????というスキルでして……ゴニョゴニョ》


 今、最後は言葉の表現なんかじゃなくて、普通にゴニョゴニョっていったよね。


 それにしても、そういえばだ。??????、これさせ使うことができたら、ワイバーンに攻撃を与えるどころか、僕のパワーアップまでできたり、アイテムボックスでも攻撃が通りそうだ……!


 そして、僕はもう一度深呼吸をして、ワイバーンに向かって走る恐怖をおさめようとした。

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