回帰
じゃあ、インクをもらうわね
この壁、私が描いたの。きれいでしょう?
白い壁に黒が映えるわよね。
セピアやブラウンの濃淡もいいアクセントだわ
でも、これね、ブルーブラックインクみたいに
だんだん黒っぽくなって最後は真っ黒になるの
だから、ときどき描き足して色を加えていかないとだめなの
じゃあ、インクをもらうわね
このぼかしも、難しいと思うでしょう? でも簡単なの
白い壁に、溶けたチョコレートを垂らして
ふき取るのを想像してみて?
跡が伸びて残るでしょう? これも同じよ
脂が多く含まれてるから伸びがいいの
チョコレートって、我ながらいい例えだわ
でも、チョコレートよりずっと希少なものを
あなたは温かいからだの中に持ってきてくれた
じゃあ、インクをもらうわね
え? これは何の絵かって?
そうね、まだ完成していないからわかりにくいかもね
これはあなたも私もよく知っているもの
生まれる前に見ていたものよ
うふふ、わからないの?
私たちみんなを温かく優しく包んでいた場所よ
まだ何か訊きたいことはある?
もう声も出ないかしら?
いい子ね、さいごにキスしてあげる
インクをありがとう、素敵な旅を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます