20:24-20:30
笹の葉には五色の糸で編まれた七夕飾りが五つ。緩やかになった風に揺れている。
真っ暗闇の中、糸で編まれた飾りだけが、ほのかな光を放って辺りを照らしていた。
青、赤、黄、紫が混ざり合い、鈍い金色を成しているが、白い糸で編まれた飾りだけ、光を放っていなかった。
鈍い金色は、亡霊のよう。
金色の亡霊は、真っ暗闇の中にひとつだけ、円を描いて佇んでいた。
大地が黒く染まる中、まるで、地上に降り佇む夜明かりのように。
しかし、この天上にそれはいなかった。
天上のどこを探しても、夜を照らす金色の円環は姿がない。
あるのは星空と、南北に走る天の河のような真白い粒子の集まり。
夜明かりがなくて当然だった。
何故ならば、ここには月がいないのだ。
昼の円環の光を返す月は、ここにはいなかった。
月がいなければ、大地を照らす夜明かりもない。時を刻むこともない。
大地は暗がり。
あるのは、昼の円環が残した、五色の糸の飾りのみ。
白い糸だけが、光を放たずに揺れている。
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