137話 吸血

「悪かった。狂歌」


「うぅぅ.....」


 思わず抱きしめると、腕の中で狂歌は泣いた。


「嫌よ....離して.....」


 数瞬後、抱きしめられていた狂歌が抵抗してきた。


 抱きしめた状態から、必死に抜け出そうとして来る。


「嫌だ」


 だから俺は、抱きしめる力を強めた。泣かせてしまった事に後悔したから。


「は、離さなと......す、吸うわよ.....」


 いくら抵抗しても意味が無いと察したのか、狂歌は血を吸うぞと脅してきた。


「別にいいぞ。それでも俺は離さないからな」


 それでも絶対に離さないと、狂歌の耳元で囁いた。


 ガプッ


 首筋を牙で突き立てられ、狂歌に血を吸われた。


 あり得ない速度で、どんどん吸われていく血液達。体内の水分を吸われ、俺は貧血を起こした。


 【神速再生】ですくさま血液を再生させ、すぐに回復する。


 だが、その回復した傍から、直ぐに狂歌に吸われ行った。


 俺は抵抗を一切せず、狂歌の頭を撫でながら吸血を促す。


 生産をしてはすぐに消費される。その繰り返しを何回続けたのだろうか。


『【吸血耐性】を獲得しました』


『【吸血耐性】が【吸血耐性・極】に進化しました』


『【吸血耐性・極】が【吸血耐性・超】に進化しました』


 気付けば”この文字”が脳内に表示されていた。


 吸血される事に慣れた影響か、再生も余裕で間に合うようになった。


「うぅぅ.....どうして離してくれないのよ.....」


 いくら吸血しても離れてくれないと理解したのか、首筋に突き立てていた牙を狂歌はようやく離した。


「お前が.....大事だからだ....狂歌.....」


 バタリッ


 そう言い残して、俺は床に倒れた。多分今の俺は顔色が凄く悪いだろう。


 ”わざと”血液を再生させずにおいたおかげで、絶賛貧血中だからな。


「あ、あなた!」


 案の定、涙目で駆け寄ってくる狂歌。


「ごめんなさい.....やり過ぎたわ......うぅぅ.....」


【無限魔力】を持っている事を、狂歌は知らない。


 俺が無理をして、血液を再生させていたと思っているハズだ。


 無理に離れるよう、思いっ切り吸血してきたからな。


 心の中では罪悪感で一杯だったのだろう。まぁ俺もだが。


「いいんだ....」


「良くないわ!」


 そう言って狂歌は抱き着いてきた。


「俺は狂歌になら、何をされたって構わない」


 俺は血液を即座に再生させ、貧血状態を治した。


「どうして?.....」


「狂歌が好きだからだ」


 思っていたことをそのまま言うと、赤面する狂歌。


「わ、私は”重い”のよ。分かってる?」


「ああ」


 確認をするかのように、狂歌はそう言ってきた。


「他の3人とイチャつくの見ただけで嫉妬するのよ?」


「ああ」


 安心させるように、1つ1つ答えていく。


「どうしても1番じゃなきゃ嫌なの」


「知ってる」


 ハッキリと、1番じゃないと駄目と言ってくる狂歌。


「ならどうして、私を一番最初に襲わなかったの?」


「タイミングが無かったんだ。俺が忘れていたとでも思っていたのか?正妻を放っておくロクでなしだとでも?」


 その一言を嘘ではないと信じたのか、押し黙る狂歌。


「それから.....それから....」


 他にもなにか無いか必死に探す狂歌。だから俺はー


「大丈夫だ。俺は狂歌の全てを受け入れる」


「あ、あなた///」


 不安にさせないよう、力いっぱい狂歌を抱きしめた。


「ほ、本当に.......私が1番?」


「ああ。1番だ」


「そ、そうなんだ。ふーん///」


 赤面しながら確認してくる狂歌。1番だと言われ、凄く嬉しそうにしていた。


「じゃ、じゃあ証明してくれるかしら?」


 期待の籠った目で見られる。


「んんっ///」


 だから俺は狂歌の顔に手を添え、唇を奪ったのだった。


 ★☆★☆


 読者様へ:次回エロ

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