65話 我は『青龍』

「そこだったのか。通りで地上を探索しても見つからなかったわけだ。」


 地上を全力で探していたが、空にいるとは思わなかったシンジ。


 青い雷を纏い咆哮をあげる巨大な青鱗を持つ龍。


 一瞬で王級クラスの眷属達を全滅させられた。


 気配を全力で断っていたおかげでまだバレていない。


(邪魔者を排除して油断している隙を突く。)


 そびえ立つ黒い岩山を駆け抜け、上空にいる青龍を狙う黒狼。


 跳躍し、鉤爪を振り下ろす。


「風爪ー風上払い」


 真横まで接近し、気付かれることなく攻撃を与えることに成功した。


「Goaaaaaaaaa」


 首を切断する勢いでやったが、攻撃が当たる直前に


 表面を軽く引き裂くだけで終わってしまった。


 悲鳴をあげ、周りに膨大な雷を放出する青龍。


「貴様!我が縄張りで暴れおって!」


(クソッ。なんで。)


 至近距離でもろに食らい体が感電し、空中で硬直する。


(それに感電した?こっちは『状態異常無効』の能力を持ってんだぞ。)


 困惑する黒狼であったが、


 青龍は首の傷を即座に再生させると黒狼を吹き飛ばした。


 地面に叩きつけられる黒狼。


 その隙に上空から青龍に、青い落雷を落とされる。


 急ぎ起き上がり、その場から加速する黒狼。


 数瞬前までいた場所に落とされる落雷。


 それだけではなかった。上空から青龍がドンドンと様々な魔法を放ってきた。


「我が身体に傷をつけたのだ。万死に値する!」


 激怒しているようだ。男の声がする。雄なのだろう。


 身体強化で加速し続け、次々と躱していく黒狼。


「ちょこまかと鬱陶しい。」


 4つの巨大な竜巻を周囲に発生させ、追い詰める青龍。


「水爪ー大山津見神オオヤマツミ


 両腕に魔力を纏い、周囲に水の斬撃を飛ばす黒狼。


 4つの竜巻を切り裂き、龍の顔に衝突する水の斬撃。


「小癪な真似を。」


 ダメージを受けた様子はない。風魔法で視界を確保する青龍。


 煙が晴れるとそこには誰もいなかった。




 ★☆★☆


「どこだ卑怯者。逃げるな!」


 上空で青龍の声が響き渡っている。


「アブねぇ。」


 岩の陰に隠れ、全力で気配を断つシンジ。


 人型となっていた。


「何でだ?何でさっきの奇襲が効かなかった。」


 腕を組み思考する。


「当たる直前に風爪の魔力が無散したのは何故だ...さっきの水爪の斬撃もだ...効いてない...」


 考えろ考えろとブツブツ独り事を言うシンジ。


「それに俺には状態異常は効かないはずだ...あり得ない...何でだ...」


 更に思考するシンジ。


「魔力攻撃が効かないと仮定して...物理攻撃は効くのだとしたら...ここから先は身体強化だけで戦う事になるのか...それに状態異常無効を突破する魔力攻撃力...キツイな...」


 戦法を考えていくシンジ。


「相手は一方的に魔法を打てて無力化することが出来る...幸い力量差は互角だが、縛りで相手が有利だな...」


 白虎を喰らった事で力が増し、青龍と互角になったシンジ。


 魔法が効かないことで相手が少し有利となっている。


「上空にいるせいで攻撃しずらいが、まぁ何とかなるな...相手が本気を出す前に殺す...魔力を全て身体強化に注ぎ、残った魔力は足場にするか...」


 上空にいる青龍に目を向けるとシンジはニヤリと笑うのだった。

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