10
花々が咲き乱れていたあの場とは違い、木々は枯れ、草花は何もなく、ただただ暗がりの中歩く。
「で、出口ってどこだよ」
「それはわからにゃい。数日か、数年かかるかもにゃ」
ハクアの後ろについて行くエイヒ。どんなに歩いても変わらない風景に不満をこぼす。そんなエイヒの不満にさらに不安を重ねた。
「待った。僕たち多分同じところを回ってる」
「誰か、唆している奴がいるにゃ」
「侵入者発見、コロ……セ」
どこからか聞こえる声の主を探すため、辺りを見渡す。しかし、姿は見えず、声だけが只々その場に響いていた。
「人魚に食べられずにここへ来れたんだ! 面白そうだねぇ、久しぶりの獲物にこの子達も大喜びだね」
声と共に周辺に
「始まり始まり。ようこそ、終焉の地へ。そして……さようなら」
アンデットと共に現れた細身の剣を腰につけ、赤く爛々とした瞳でこちらを見下す。彼が合図を出すと獣達は一斉に飛びかかる。
「
いち早く反応したのはヒカゲであった。
「キリュー、
「それって……わかった」
殺す事に抵抗のあるキリユウ。そんな姿を見てヒカゲはある人と重ねていた。それぞれ短刀や剣を構え、攻撃態勢をとる。
「彼ノ方ノ元ヘ行カセテハナラナイ。コロセ、コロ、セ」
「彼の方って?」
男と噛み合わない話。キリユウ達は知らないと言い切るが、再び襲いかかるアンデットは、連携が取れていて、とても厄介である。フィアナが魔法で弾き飛ばす事はしてくれるが、一向に減らない。魔法を無理に使い続けるという事は、命にも関わると言うこともあり、一刻も早く殲滅しなければならない。
ヒカゲは、慣れた手つきでライフごと体をばらす。そして獣の体は地に落ち、形が残らないほど、ドロドロとした血肉かがその場に溜まっていく。
「少年たちは、下がっていて。俺が殺るから」
そう言い、キリユウ達の前に立ち、隙のないアンデットの連携攻撃を
その瞳はとても冷血で、奥底に心をしまい込み、只々感情のない様を演じている様にキリユウには映る。
──僕の行く道を……示せ
ヒカゲの後ろから狙うアンデットのライフまでの道を粒子が作る。その道を迷いなく辿り、貫く。ライフは砕け、地に落ちる。頬や服に付着する生暖かい血。ライフを砕き、肉を貫いた感触。それはいいものとは言い難い。
「悲しそうな瞳、僕と同じだよ。一人で背負わないで、僕にも半分背負わせて」
開かれる瞳はとても優しい薄桃色の瞳。命を奪う行為はとても重い
「コロセ、彼ノ方……ノ
呟かれる言葉は「彼の方」と、フィアナの言っていた「瞳」、それを外には出してはいけないと言うことだ。彼は抜け殻の様に只々、アンデットたちに殺す様に命じる。一番消耗しているのはフィアナだった。息が荒れ、赤く染まる瞳は、充血し、血が頬を伝う。
「う、ウチも戦わなきゃ。エイヒやフィアナ様を守るためにっ」
エイヒ達に数人が襲いかかるが、その前に札が飛ばされ、祈るように三角を指で作る。
「諸々の邪を祓ひ給へ
一瞬にしてあたりが白く光り、襲い掛かってきたアンデットは姿を消した、否消された。
「ハクア! だ、いじょ……っ」
エイヒがハクアの顔を覗き込むが、一つの命を奪う事をした事がないのだろう。とても思いつめた顔をしていた。キリユウ達はそんな彼らをかばう様に広い範囲のアンデットを倒していく。血肉の裂ける音が耳に響き、吐き気を催すが、止まらず倒し続ける。そんな時、
「フィアナっ!」
絶えず魔法で危なくなったキリユウやヒカゲを援護していたフィアナがよろめき、倒れる。その隙を見逃さんとアンデット達はフィアナを狙い、襲いかかった。
キリユウの見る粒子の飛び交う世界は少し先の流れが読め、ゆっくりと動く世界である。戦闘において先を読める事でフィアナの前に出てアンデットを妨げる。
刹那、数十人のアンデットが宙を舞い、キリユウともう一人が蹴散らした。身の丈以上の大剣を操り、アンデットを蹴散らした蒼髪の青年であった。
「九年待たせといて、世話の焼ける姫ちゃんだな」
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