第241話

「私のクラスメイトですよ、先輩と少し話をしてみたいっていうので連れて来ました」


「なんで俺なんかと……」


 そんな事を初白と話ていると、三人の女子生徒は俺に話し掛けてきた。


「あの! 配信見ました! カッコ良かったです!」


「好きな女子の為にあそこまでやる人ってなかなか居ないよね?」


「それにすごく強いし!」


「あ、あぁ……そ、それは……どうも」


 あぁ、年下の女の子のこう言うノリ苦手だな……。

 まぁ年下じゃなくても苦手だけどさ。

 そんでもってこの子達を呼んだ初白はなんで俺をジト目でじーっと見てるの?

 お前が連れてきたんだよね?

 てか、助けてお願い。


「最近なんかこの辺りを不良がうろついてるらしくって」


「私達怖くて……先輩ならなんとかしてくれるんじゃ無いかと思って!」


「お願いします! このままじゃ怖くて出歩けなくて!」


「そ、そう言われても……」


 昔は俺が怖がられてたんだが?

 この子たちはなんというか手のひら返しが凄いな……。

 というか早く帰りたいし、そろそろ……。


「わ、悪い俺もう帰るから……初白、お前もその子達とさっさと帰れ」


「は? 何言ってるんですか先輩? 私は先輩と帰りますけど」


「はい?」


 そんな感じで俺は初白と二人で帰る事になった。

 ちなみに先ほどまで居た初白の友達とは昇降口で別れた。

 今は初白と駅前でクレープを食べている。


「なんで俺クレープなんて食ってるんだ……」


「あ、先輩一口下さい」


「ほらよ」


 俺がクレープを差し出すと初白はクレープにかぶりつく。

 一緒に帰ると言いつつなんだか機嫌の悪かった初白が突然食べたいと言いやって来たクレープ屋。

 クレープは奢らされるし、何でかカップルだらけの公園で俺は初白とクレープ食ってるし……本当に俺何やってんだろ?


「先輩の美味しいですね」


「そりゃ高いからな」


「まぁ、私の方が高いですけどね」


「俺の奢りのくせに威張るな!」


 なんで俺が初白なんかにクレープを……。

 そんな事を考えながら街を見ると確かに素行の悪そうの連中が多いように見える。

 一体どうしたんだ?

 不良共が抗争でも始めようとしてるのか?

 そう言えば……前に弓島が使っていた薬、確かヤクザが弓島に流した物だよな?

 この前見たのは注射器のタイプで恐らくだが効力も高くなっていた。

 もしかして薬を巻いている組が自分達が使う前に試作品を学生の不良にバラまいて経過を見ているとすれば……。


「嫌な予感がするな……」


「はひ?」


「お前はお気楽そうだな……クリームついてんぞ」


「え? どこですか?」


「じっとしとけ」


 俺はそう言って初白の頬からクリームを取ってやった。


「まったく」


「あ……あの……ありがとうございます……」


「女なんだから少しは気をつけろよ」


 何故か俯く初白。

 一体どうしたのかと疑問に思っていると、俺は公園の回りから視線を感じた。

 そこらをウロウロしていた不良達が俺の回りに集まり始めていた。

 数は恐らく十数人。

 昨日の今日でお礼参りにでも来たのだろうか?

 しかし、なんでこんなに不良が多いのか聞き出しチャンスでもある。

 初白を安全な場所まで連れて行ったらこいつらに聞いてみるか……なんて事を思っていると……。


「先輩何かまた良からぬ事を考えてません?」


「は? 別にそんな事を考えてないぞ」


「いえ、考えてます。そういう顔する先輩は喧嘩する事を考えてる顔です」


「どんな顔だよ! はぁ……回り見ろよ、明らかに俺に用がある奴らが居るだろ? 穏やかな感じもしない。だからちょっとあいつらに色々聞いてくるから、お前はどっか安全なとこに行ってろ」


 正直にそう言ったのだが、初白はもちろん納得などしない。

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