第188話
「なんか海なんて久しぶりに来たな」
「去年は行かなかったし、その前は受験でそれどころじゃなかったしね」
「まぁな、他に客が居ないのは良いな、うるさくなくて」
「そうだね、今の時期はどこのビーチも混んでるからね」
俺と高弥がそんな話をしていると、すぐ近くで大島と悟がまたしても言い争いを始める。
「お前泳げんのかよ?」
「あぁ? 泳げるに決まってんだろ、あんまり舐めんな」
「じゃぁ勝負しようじゃねぇか、まぁお前が本当に泳げればの話だけどな」
「あぁ!? 上等だよやってやる!」
こいつらはどこに居てもこんなんばっかりだな……。
「せっかく静かだったのに……」
「まぁまぁ、元気で何よりだろ?」
「元気というか、あいつらはうるさいだけだろ」
俺がため息を吐いていると、今度は後ろから誰かが俺の方にやってきて、肩をトントンと叩く。
「ねぇねぇ、平斗君」
「あぁ、真奈美さん。着替え終わったんですか?」
「いやぁ~時間かかっちゃってねぇ~、茜が恥ずかしがってなかなか更衣室から出てこなくてさぁ~、あの水着って平斗君が選んだんでしょ?」
「はい、頼まれたので」
「ふむふむ、なかなかいい趣味してるとお姉さんは思うよ」
真奈美さんはそう言って俺に親指を突き立てる。
「そ、そうですか、それで茜さんは?」
「あぁ、ほら来たよ」
そう言ってやってきた茜さんは、水着の上にパーカーを着て前を完全に閉めていた。
しかも顔は真っ赤でなんでか俺を睨んでいる。
「茜さん、パーカー脱がないんですか?」
「う、うるさい! わ、私の勝手でしょ!!」
なんでこんな怒ってるんだ?
俺は一回水着を見てるし、恥ずかしがることないと思うのだが……。
そんな茜さんを見た真奈美さんは、ため息を吐いて俺に耳打ちをする。
「なんか、いざ来てみたら露出度が高くて恥ずかしいんだって」
「いや、俺一回見てるんですけど」
「あれだよ、平斗君が選んでくれたから買ったけど、いざ冷静になって着てみたら露出が高くて恥ずかしくなっちゃったみたい」
「茜さんってそんなこと気にする人でしたっけ?」
「はぁ……女心がわかってないねぇ……」
「はい?」
女心と言われても俺は男だしなぁ……。
「あはは、平斗に女心なんてわかりませんよ。わかってればこんなややこしいことになってません」
「あ、確かにそっか。平斗君、アンタはもう少し女心を学びなさい」
「なんか最近よくそれ言われる気がします」
高弥と真奈美さんっていつからこんな仲良くなったんだ?
そんな話をしていると、茜さんが俺の腕を引っ張ってきた。
「平斗、パラソル立てるから手伝え!」
「それは全然良いんですけど、あんまり引っ張らないでくださいよ。それに暑くないんですか?」
「う、うるせぇ!! 変態!!」
「なんで……」
俺は茜さんと一緒にパラソルを立て始めた。
別荘の倉庫にある物は自由に使って良いと言われてはいたが、パラソルのほかにもボムボートや浮き輪、水鉄砲に花火など様々な物用意されていた。
しかも全部ほぼ新品。
「しかし、すごいですねこの無人島、本当に俺達以外誰もいなかった」
「まぁ、変なナンパに会うよりは良いけどな」
「ま、茜さんは海では目立ちますらね」
その大きな胸は男の目を自然とくぎ付けにするからな……。
いくら言葉遣いが男っぽくても、顔とその体で茜さんは女性であることを強く主張している。
「おい、今どこ見て言った?」
ヤバイ、胸を見ていたのがばれた……誤魔化してもどうせ殴られるしなぁ……。
「茜さんの胸を見ながら言いました」
「は、はぁ!? な、なんでそんなハッキリ!!」
「いや、まぁ……流石に見ちゃいますよね? 俺も男だし」
「お、お前本当に変態だな! あんま見るな!!」
茜さんはそう言うと自分の胸元を両手で隠す。
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