第80話

 なんか、私よりも大人っぽい気がする……。 いやいや!

 私だって頑張れば、この子くらい大人っぽく振る舞えるわよ!!


「なんでも良いけど、少し静かにしろ……たくまさかお前がいるなんて……はぁ……」


「なんですかそのため息! 別に私がどの図書館に居ても良いじゃ無いですか!」


「俺の前には現れないでくれ」


「なんだとコラー!」


 まったく、島並先輩はいつもこうだ。

 私に対しては雑に扱って……もう少し優しくしてくれても……。

 てか、私はなんで島並先輩にこんなにイライラしてるの?

 




 最悪だ……この状況を一番知られたくない人物に知られてしまった……。

 てか、なんでよりにもよって今日はこの図書館に居るんだよ……他にも図書館色々あるだろうが!


「はぁ……何でも良いけど、お前は真木から勉強教わってんだろ? お前も勉強しろよ、俺はこの子に勉強を教えてやらなきゃいけないんだよ」


「言われなくても分かってます! じゃあ、も私に声掛けないで下さい!」


「お前が話し掛けてきたんだろうが……」


 初白はそう言うと、自分の座っていた椅子に戻っていった。


「はぁ……あいつは……」


「あ、あの……あの子が島並さんの言ってた……」


「あぁ……馬鹿だ……あてっ!」


 俺がそう言った瞬間、後頭部に何かが投げつけられた。

 後ろを振り向くと、不機嫌そうな初白が俺の方を見ていた。

 どうやら初白の方まで俺の声は聞こえたらしい。


「こんな感じの子供っぽい奴でな……」


「そうなんですか……仲良いんですね」


「全然、正直俺は仕方なくあいつに付き合ってるだけだからな……」


「そ、そう……なんですか……」


 城崎さんはそう言うと、なんだか少し複雑そうな顔をして、問題集に視線を戻した。

 もしかした分からない問題でもあったのだろうか?

 

「どうした? 分からない問題でもあったか?」


「い、いえ大丈夫です……」


「それなら良いけど……」


 俺がそう言うと、今度は後ろから誰かが肩を叩いてきた。


「ん? なんだお前か……」


「なんだとは失礼だな、僕は君にお願いを聞いてるに」


 話し掛けてきたのは高弥だった。

 高弥はニコニコしながら、俺に向かってそう言う。

 恐らく自分に初白を押しつけて、お前は何をしているんだと言いたいのだろうが……こいつ多分何かまた勘違いしてやがるな……。


「それで、隣の可愛い子は誰?」


「あぁ、道場の門下生だよ、実は勉強を見て欲しいって頼まれてな」


「へぇ~そうなんだ、初白さんは僕に押しつけたのに」


「別に押しつけた訳じゃねーよ、こっちだって頼まれたんだ」


「まぁ、良いけど……あ、そう言えば初白さんから聞いたよ」


「何をだよ」


「全教科60点以上で教えるんだって……平斗の過去……」


「……まぁな……言っちまったしな」


「いいの? 彼女、もしかしたら本当に取っちゃうかもよ?」


「そのときは……話すよ、全部な……」


「そっか……まぁ、平斗がそれで良いなら、僕は何も言わないよ……」


 高弥はそう言うと、俺の元を離れ初白の隣の席に戻っていった。


「あ、あの……あの方は?」


「あぁ、なんか悪いな俺の知り合いが……さっきのは真木高弥って言って、俺の友人だ」


「そうなんですか……島並さんってお友達多いんですね」


「そんな事は無いよ……」


 どっちかって言うと、友人と呼べる存在は今の二人だけだし。


「あの……それと話しに出てきた島並さんの過去の話しってなんですか?」


「え……あぁ……いや、何でも無いよ」


 噂を知らない城崎さんに説明するのは、色々大変そうだ。

 それに、説明してるうちにうっかり全部話してしまうかもしれないし……。


「昔、島並さんに何かあったんですか?」


「何でもないよ……ほら、勉強しよ、テストは来週だよ」


 俺は話しを誤魔化し、自分のノートに視線を戻した。

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