第80話
なんか、私よりも大人っぽい気がする……。 いやいや!
私だって頑張れば、この子くらい大人っぽく振る舞えるわよ!!
「なんでも良いけど、少し静かにしろ……たくまさかお前がいるなんて……はぁ……」
「なんですかそのため息! 別に私がどの図書館に居ても良いじゃ無いですか!」
「俺の前には現れないでくれ」
「なんだとコラー!」
まったく、島並先輩はいつもこうだ。
私に対しては雑に扱って……もう少し優しくしてくれても……。
てか、私はなんで島並先輩にこんなにイライラしてるの?
*
最悪だ……この状況を一番知られたくない人物に知られてしまった……。
てか、なんでよりにもよって今日はこの図書館に居るんだよ……他にも図書館色々あるだろうが!
「はぁ……何でも良いけど、お前は真木から勉強教わってんだろ? お前も勉強しろよ、俺はこの子に勉強を教えてやらなきゃいけないんだよ」
「言われなくても分かってます! じゃあ、も私に声掛けないで下さい!」
「お前が話し掛けてきたんだろうが……」
初白はそう言うと、自分の座っていた椅子に戻っていった。
「はぁ……あいつは……」
「あ、あの……あの子が島並さんの言ってた……」
「あぁ……馬鹿だ……あてっ!」
俺がそう言った瞬間、後頭部に何かが投げつけられた。
後ろを振り向くと、不機嫌そうな初白が俺の方を見ていた。
どうやら初白の方まで俺の声は聞こえたらしい。
「こんな感じの子供っぽい奴でな……」
「そうなんですか……仲良いんですね」
「全然、正直俺は仕方なくあいつに付き合ってるだけだからな……」
「そ、そう……なんですか……」
城崎さんはそう言うと、なんだか少し複雑そうな顔をして、問題集に視線を戻した。
もしかした分からない問題でもあったのだろうか?
「どうした? 分からない問題でもあったか?」
「い、いえ大丈夫です……」
「それなら良いけど……」
俺がそう言うと、今度は後ろから誰かが肩を叩いてきた。
「ん? なんだお前か……」
「なんだとは失礼だな、僕は君にお願いを聞いてるに」
話し掛けてきたのは高弥だった。
高弥はニコニコしながら、俺に向かってそう言う。
恐らく自分に初白を押しつけて、お前は何をしているんだと言いたいのだろうが……こいつ多分何かまた勘違いしてやがるな……。
「それで、隣の可愛い子は誰?」
「あぁ、道場の門下生だよ、実は勉強を見て欲しいって頼まれてな」
「へぇ~そうなんだ、初白さんは僕に押しつけたのに」
「別に押しつけた訳じゃねーよ、こっちだって頼まれたんだ」
「まぁ、良いけど……あ、そう言えば初白さんから聞いたよ」
「何をだよ」
「全教科60点以上で教えるんだって……平斗の過去……」
「……まぁな……言っちまったしな」
「いいの? 彼女、もしかしたら本当に取っちゃうかもよ?」
「そのときは……話すよ、全部な……」
「そっか……まぁ、平斗がそれで良いなら、僕は何も言わないよ……」
高弥はそう言うと、俺の元を離れ初白の隣の席に戻っていった。
「あ、あの……あの方は?」
「あぁ、なんか悪いな俺の知り合いが……さっきのは真木高弥って言って、俺の友人だ」
「そうなんですか……島並さんってお友達多いんですね」
「そんな事は無いよ……」
どっちかって言うと、友人と呼べる存在は今の二人だけだし。
「あの……それと話しに出てきた島並さんの過去の話しってなんですか?」
「え……あぁ……いや、何でも無いよ」
噂を知らない城崎さんに説明するのは、色々大変そうだ。
それに、説明してるうちにうっかり全部話してしまうかもしれないし……。
「昔、島並さんに何かあったんですか?」
「何でもないよ……ほら、勉強しよ、テストは来週だよ」
俺は話しを誤魔化し、自分のノートに視線を戻した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます