第75話
「え……な、なんでですか?」
「誰かを助けても、自分が不幸になったら元も子もないだろ? 平斗は……あの事件さえなければ、あんな噂を広げられることも無かったんだ……」
「な、なんで……島並さんは分かっていて誰かを助けたんですか? じゃ、じゃぁ……まさか島並さん……その人の事を……」
初白さんは何かに気がついたらしい。
結構勘が良いのかもしれないな。
「君の想像してる通りだよ……平斗はその子にそう言う感情を抱いてたから……あんな事をしたんだ……それなのにあの女は……」
今思い出しただけでも腹が立つ。
平斗があの子の為にどれだけの事をしたかも分からず、あの女は手の平を返して平斗を目の敵にした。
平斗はそうなることを分かった上でそれをした。
あの女の事を思って、そうしただけに平斗が一番心のダメージを受けただろう。
「……そうなんですか」
「あぁ……もうこの話はやめよう、勉強しないと初白さん赤点になっちゃうよ」
「そ、それは困ります! 勉強します!」
「うん、じゃあ勉強しようか」
「はい」
俺は初白さんにそう言って、図書館の座っていた椅子に戻った。
*
城崎さんに勉強を教えた、翌日の事だった。 俺はまたしても朝から初白に呼び出されていた。
「島並先輩!」
「なんだよ、朝っぱらから……」
「勉強会の件、ありがとうございます!」
「おう、上手くいってるか?」
「バッチリです! とりあえずテストはなんとかなりそうです」
「そうか……ならいいや」
「それで、一つだけ気になることがあって、聞きたいんですけど良いですか?」
「なんだよ、真木のタイプの女とかは知らないぞ、あいつ何回聞いても普通の女の子って曖昧な答えを出すからな」
「違いますよ、島並先輩の事です」
「はぁ? 俺の事? 一体なんだよ?」
「先輩……なんであんな噂が流れてるんですか?」
「………」
まぁ、いつかは聞かれるとは思っていたけど……まさか今とはな……。
「お前も聞いたことあるだろ? その噂通りだ」
「嘘ですよね? 本当はもっと何か理由があるんじゃないですか?」
こう言うってことは……。
「高弥か……あいつ……何か余計な事を言いやがったな……」
「島並先輩……私、先輩が噂通りの人だなんて思えないんです……だから、教えて貰えませんか?」
「………それを知ってどうするんだよ」
「ど、どうするって……」
「お前がそれを知って何か得でもあるのか? 無いだろ? なら良いだろ」
「で、でも! 知らないままモヤモヤするのは嫌なんです! い、一応私先輩の後輩じゃないですか! 二人で真木先輩を落とすために頑張ってきたじゃないですか!」
「………」
なんでこいつは……俺の過去なんかに興味を持ったんだか……聞いても別に面白くもなんともねーのに……。
でも……まぁ、色々相談してる相手の事を知りたいのは当たり前かもしれないな……好きな人の友人ってだけの得体の知れない男だし。
「良いだろう……話してやる」
「本当ですか?」
「ただし条件がある」
「じょ、条件ですか……」
「あぁ、今回のテストで全科目60点以上を取れ」
「え!? 全科目ですか? 合計じゃ無くて?」
「アホかお前……それが達成出来たら教えてやるよ……包み隠さずな」
このアホの学力で今から頑張って全教科平均60点は結構厳しいかもしれない。
これで諦めてくれれば一番良いのだが……。
「……全教科60点以上ですね……」
「あぁ……合計じゃねーぞ」
「………分かりました、ちゃんと約束守ってくださいね!」
「お、おう……」
まさか、了承するとは……なんでそんなに俺の過去なんかが知りたいんだ?
高弥の奴……何か余計な事を言ったな?
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