第72話
俺がそんな事を考えて居ると、城崎さんの部屋を誰かが二回ノックしてきた。
恐らく城崎さんのご家族だろう。
城崎さんが返事をすると部屋のドアが開き、金髪に青い瞳の大人の女性が入ってきた。
城崎さんのお姉さんだろうか?
二十台前半くらいに見えるし……って言っても恐らく外国の人だから、年齢なんてみただけでは分からないけど。
「やっぱり、もう来てたのね」
「お母さん、帰ってきたの?」
「えぇ、少し早めにね」
「お母さん!?」
俺は思わず声を出してしまった。
いや、お母さんって!
こんなに若くて綺麗なのに!?
お母さん!?
「あ、あのぉ……初めまして、自分は城崎さんの通っている道場の……」
「あぁ、島並さんね、初めまして瑠香の母です」
「ど、どうもこちらこそ……」
綺麗な人だ……片親がロシア人とは聞いていたが、まさか母親の方とは……どうりで娘さんが可愛い訳だ……。
「うふふ、聞いてたとおり良い人そうで安心したわ」
「え?」
「この子ったら、道場に行った日はいつも貴方の話しをするのよ、今日はどうだったとか、今日島並さんがって」
「あ、あぁ……そうなんですか」
まさかそんなに俺の事を話してるなんて……結構恥ずかしいな……。
「お母さん! 恥ずかしいからそういうこと言わないでよぉ!」
「あらあらごめんなさい、それじゃあ娘をよろしくお願いしますね」
「は、はい」
城崎さんのお母さんはドアを閉めて部屋を後にした。
「す、すいません……うちの母が」
「いや、若くて良いお母さんじゃないか」
城崎さんのお母さんが来た後も俺たちは勉強を続けた。
城崎さんは何事に対しても真面目だ。
稽古もそうだが、勉強も覚えるのが早い。
理解が早いと言うべきだろうか、自分で理解が出来ると応用も直ぐに出来るようになった。
「城崎さん、やっぱり覚えるの早いね」
「そうですか? そう言って貰えると嬉しいです」
「この調子なら、自分で勉強しても良い点数が取れると思うけど……」
「い、いえ! わ、わたしは人に教えて貰わないと理解出来ないので、明日からもよろしくお願いします!」
「あ、あぁ……それは全然良いけど……」
そんな必死に頼まなくても……約束したした明日も教えるよ。
「じゃあ、俺はそろそろ家に帰るよ、もう遅いからね」
「あ、ご飯とか食べて行きませんか? 勉強教えて貰ったし、そのお礼と言ってはなんですけど……」
「え? いや、そんなの悪いよ」
「大丈夫ですよ、島並さんにはいつも良くして貰ってますから」
「い、いや……でも……」
正直城崎さんの家で夕食をご馳走になるのは個人的に気まずいので遠慮したい。
だって、その食卓には絶対に城崎さんのお父さんとお母さんが居るだろうし……。
俺はなんとか断る良い手は無いかと考えていると、またしても城崎さんの部屋が二回ノックされ、城崎さんのお母さんが入ってきた。
「島並君、夕飯食べていかない?」
「え? あ、いや……」
まさかのお母さんからも同じ提案をされるとは……これは更に断りづらくなってしまった。
そして結果……。
「い、いただきます」
夕飯をご馳走になることになってしまった。 しかし、幸いだったのが城崎さんのお父さんがまだ家に帰っていなかったことだろうか。 俺は食卓に出された料理を少し急いで食べていた。
「美味しいですね、この料理」
「うふふ、そう? ありがとう」
優しいお母さんに美少女の娘、お父さんもきっとイケメンで真面目なお父さんなんだろうな。
これが勝ち組ってやつか……。
俺がそんな事を考えながら、食事をしていると玄関の方からガチャリとドアの開く音が聞こえてきた。
「あら、お父さんも帰ってきたのかしら?」
うわぁ……ついに家族が揃ってしまった……。
この状況で更にお父さんが来るのはきっついぞ……。
俺がそんな事を考えていると、リビングのドアを開けてついに城崎さんのお父さんが姿を現した。
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