第70話
*
翌日から高弥と初白の勉強会がスタートした。
若干心配な事もあり、俺は少しだけ図書館に様子を見に行った。
初白がガチガチに緊張していた以外は大丈夫そうだ。
「心配して損したな……」
俺はそう思いながら、図書館を後にした。
今日は稽古に出ようと決めていたので、俺はそのまま真っ直ぐ家に帰り、着替えをして道場に向かう。
とは言っても、学生連中はテスト期間で来ない奴がほとんどだし、もともと平日は門下生が少ない。
俺が出る意味なんてあるんだろうか?
俺はそんな事を考えながら、道場に向かった。
やっぱり人は少ない。
だけど、やっぱり城崎さんは今日も来ていた。
「城崎さん」
「あ、島並さん、今日は道場に出てきてるんですね」
「まぁね……来週からはテスト勉強するから入れないから、じゃあさっそくやろうか」
「はい!」
俺と城崎さんは稽古を始めた。
めずらしく今日は竹内さんも居ないので、道場は平和だ。
「フン!」
「お、力付いてきたね、結構痛かったよ」
城崎さんのパンチを受けながら俺は初城さんにそう言う。
初城さんはそう言われた事が嬉しかったのか、少し照れた様子で稽古を続ける。
「よし、じゃあ少し休憩しようか」
「は……はい……」
やっぱり少し体力が問題だな、これじゃあ一試合でバテちまうな……。
「あ、あの……島並さん」
「ん? どうした?」
「あ、あの……茜さんから聞いたんですけど……勉強が得意って本当ですか?」
「え? あぁ……まぁ……得意な方だと思うけど、どうして?」
「そ、その……実は……最近道場に来すぎて成績が……」
「あぁ……なるほどね……それで勉強を教えて欲しいってこと?」
「はい……出来ればお願いしたくて……」
「まぁ、良いけど……でも清浄ってかなりのお嬢様学校で進学校だろ? 俺が勉強教えられるかな?」
「あ、じゃあこの問題分かりますか?」
「え?」
城崎さんはそう言うと、鞄から参考書を取り出してきて俺に見せてきた。
「あぁ、これなら分かるよ……これはここをこうして」
「あぁ! なるほど! そう言うことだったんですね!」
「まぁ、これくらいならなんとか教えられると思うけど……俺で良いの?」
「はい! よろしくお願いします!」
そんな訳で、俺は来週から城崎さんに勉強を教えることになってしまった。
まぁ、別にそれは良いんだけど……。
「でも、どこでやるんだ? 図書館とかにする?」
「私の家とかでも良いですよ」
「いや……それはまずいんじゃない?
「え? どうしてですか?」
「いや……俺がこんな事を言うのもなんだけど……ご両親が誤解しないか?」
「何をですか?」
そんな曇りの無い目でそんな事を聞かないでくれ……。
いや、だって高校生の娘が知らない男を家に呼ぶって、結構な一大イベントだと思うし、ご両親はもしかして彼氏なんじゃないかと誤解するんじゃないか?
俺がそんな事を思っていると城崎さんは、笑顔で続けた。
「心配しなくてもうちは全然大丈夫ですよ、お願いしてるのは私ですし、勉強場所は私の家が一番ですよ」
「いや……そう言うことじゃないんだが……」
俺が家にお邪魔する事を遠慮しているとこの子は思っているのかもしれないがそうでは無い。
城崎さんのご両親に誤解されるのが嫌なだけだ。
「母に島並さんの話しもしていて、是非お会いしてご挨拶をしたいと言っていたので、丁度良いです」
「あぁ……そうなの……」
ここまで来たら、行かないとは言えなさそうだ。
てか、この子家で俺の事をどんな風に言ってるんだろうか……。
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