第66話



 放課後、俺と高弥は学校をの帰り道に二人でゲーセンに来ていた。

 大島と悟は昇降口で捲き、俺は高弥と久しぶりに下校していた。


「よし! また僕の勝ち!」


「クソ……やっぱりゲームでは高弥には叶わないか」


「はは、まぁリアルファイトでは君に負けるけどね」


「お前とリアルファイトする機会なんて絶対にねーよ」


 ゲームセンターで俺たちは格闘ゲームで遊んでいた。

 このゲームは中学時代の時から高弥と遊んでいるのだが、毎回俺は高弥に勝てない。


「はぁ……まったく何かと思えば……ゲーセンに寄ろうなんて」


「最近平斗と来てなかったからね、たまには良いだろ?」


「別にいつでも誘えよ、稽古が有ると言っても、強制じゃないから放課後は付き合えるぞ」


「それでも、最近は子分二人に平斗を取られちゃうからね」


「だから子分じゃねーっての……」


 そんな事を話しながら、俺と高弥が遊んでいると、クレーンゲームのコーナーに見覚えのある女子高生を発見してしまった。

 その女子高生を見た瞬間、俺はゲームの筐体の椅子から立ち上がった。


「高弥、まずい……出よう」


「え? 急にどうしたんだい?」


「村谷が居るんだよ……」


「え? どこに?」


 俺は彼女が居る方向を指さす。

 村谷千咲(むらや ちさき)、彼女は俺にとってはあまり会いたくな女子生徒だ。

 

「一緒に居るのは友達かな……いい気なもんだよ……」


「まぁ、そう言うなよ……行こうぜ」


「平斗がそう言うなら……僕は彼女に文句の一つ位言いたいけど」


「やめろよ、もう終わった事だ」


 俺たちはそう言って、ゲームセンターを後にしようとした時だった。


「ん……なんかあいつら絡まれてないか?」


「え? あ、本当だね……まぁ、村谷は元から顔立ちは良いし、他の友達も可愛い子達だからナンパされてるんだろ? 放っておこう」


 なんだか困っているようだ。

 しかも、村谷達は男達に囲まれて抜け出せないようだ。

 逃げることも出来ないし、他に助けようとする奴も居ない。

 

「……ちょっと、行ってくる」


「まて、平斗」


 俺がそう行ってその場を離れようとすると、高弥が俺の事を止めた。


「そんな事をしても平斗には何の得もないんだよ? 放っておけば良いんだ、あんな女」


「確かに……まぁ、そうなんだけど……」


 高弥の言うとおりだ、確かに助けたとしても俺には何の得も無い。

 でも、それでも僕が彼女を助けたい理由は、得とかそう言う問題の話しでは無かった。


「ありがとう高弥……でも行ってくるわ」


「あ! はぁ……まったく……」


 俺は高弥にそう言い、村谷の元に向かった。

「ねぇねぇ良いじゃ~ん」


「俺らも野郎だけで寂しいからさぁ~」


「悪いな、そいつは俺の連れなんだ」


「あん? 誰だお前」


 男達は3人だった、1人は茶髪、もう2人は黒髪だったが髪型をワックスでガッチガチに固めていた。


「その子達の知り合いだよ、悪いけど用事があるから、その子達を解放して貰えない?」


「し、島並君!? な、なんで……」


「へぇ~じゃあお兄さん、すこし俺らとお話しないか?」


「大丈夫大丈夫、ちょっとだけだから」


 俺は男達にそう言われ、店の外の裏に連れていかれた。

 

「なぁ兄ちゃん空気読めよ……」


「空気? 読んだからあの子達を助けにいったんだが?」


「へぇ……そう……」


「あぁ……分からないのか? まったく相手にされてなかっただろ? 諦めて家に帰れよ」


「んだとぉ? この野郎!!」


 男達は俺の言葉に腹を立て、そのまま殴り掛かってきた。

 

「まったく……」


 俺はため息を吐きながら、そいつらの拳を避ける。

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