第66話
*
放課後、俺と高弥は学校をの帰り道に二人でゲーセンに来ていた。
大島と悟は昇降口で捲き、俺は高弥と久しぶりに下校していた。
「よし! また僕の勝ち!」
「クソ……やっぱりゲームでは高弥には叶わないか」
「はは、まぁリアルファイトでは君に負けるけどね」
「お前とリアルファイトする機会なんて絶対にねーよ」
ゲームセンターで俺たちは格闘ゲームで遊んでいた。
このゲームは中学時代の時から高弥と遊んでいるのだが、毎回俺は高弥に勝てない。
「はぁ……まったく何かと思えば……ゲーセンに寄ろうなんて」
「最近平斗と来てなかったからね、たまには良いだろ?」
「別にいつでも誘えよ、稽古が有ると言っても、強制じゃないから放課後は付き合えるぞ」
「それでも、最近は子分二人に平斗を取られちゃうからね」
「だから子分じゃねーっての……」
そんな事を話しながら、俺と高弥が遊んでいると、クレーンゲームのコーナーに見覚えのある女子高生を発見してしまった。
その女子高生を見た瞬間、俺はゲームの筐体の椅子から立ち上がった。
「高弥、まずい……出よう」
「え? 急にどうしたんだい?」
「村谷が居るんだよ……」
「え? どこに?」
俺は彼女が居る方向を指さす。
村谷千咲(むらや ちさき)、彼女は俺にとってはあまり会いたくな女子生徒だ。
「一緒に居るのは友達かな……いい気なもんだよ……」
「まぁ、そう言うなよ……行こうぜ」
「平斗がそう言うなら……僕は彼女に文句の一つ位言いたいけど」
「やめろよ、もう終わった事だ」
俺たちはそう言って、ゲームセンターを後にしようとした時だった。
「ん……なんかあいつら絡まれてないか?」
「え? あ、本当だね……まぁ、村谷は元から顔立ちは良いし、他の友達も可愛い子達だからナンパされてるんだろ? 放っておこう」
なんだか困っているようだ。
しかも、村谷達は男達に囲まれて抜け出せないようだ。
逃げることも出来ないし、他に助けようとする奴も居ない。
「……ちょっと、行ってくる」
「まて、平斗」
俺がそう行ってその場を離れようとすると、高弥が俺の事を止めた。
「そんな事をしても平斗には何の得もないんだよ? 放っておけば良いんだ、あんな女」
「確かに……まぁ、そうなんだけど……」
高弥の言うとおりだ、確かに助けたとしても俺には何の得も無い。
でも、それでも僕が彼女を助けたい理由は、得とかそう言う問題の話しでは無かった。
「ありがとう高弥……でも行ってくるわ」
「あ! はぁ……まったく……」
俺は高弥にそう言い、村谷の元に向かった。
「ねぇねぇ良いじゃ~ん」
「俺らも野郎だけで寂しいからさぁ~」
「悪いな、そいつは俺の連れなんだ」
「あん? 誰だお前」
男達は3人だった、1人は茶髪、もう2人は黒髪だったが髪型をワックスでガッチガチに固めていた。
「その子達の知り合いだよ、悪いけど用事があるから、その子達を解放して貰えない?」
「し、島並君!? な、なんで……」
「へぇ~じゃあお兄さん、すこし俺らとお話しないか?」
「大丈夫大丈夫、ちょっとだけだから」
俺は男達にそう言われ、店の外の裏に連れていかれた。
「なぁ兄ちゃん空気読めよ……」
「空気? 読んだからあの子達を助けにいったんだが?」
「へぇ……そう……」
「あぁ……分からないのか? まったく相手にされてなかっただろ? 諦めて家に帰れよ」
「んだとぉ? この野郎!!」
男達は俺の言葉に腹を立て、そのまま殴り掛かってきた。
「まったく……」
俺はため息を吐きながら、そいつらの拳を避ける。
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