第30話
「なんで俺がそんなことを……」
「覗いてたこと初白に言うぞ?」
「そ、それはやめろよ!」
「じゃあ、良いからちょっと来い」
「……仕方ねーな……」
俺は隠れていた大島を連れて、昇降口に向かった。
「それで、聞きたいことってなんだよ」
「あぁ、初白の事でちょっとな……」
「初白さんがどうかしたか? てか、俺よりアンタの方が詳しそうだけど……」
「んな訳ねーだろ。一応説明しておくが、家庭科室でやってたのは、ただの料理の特訓だからな。しかも頼んできたのはあいつだからな!」
「べ、別に聞いてねぇよ!」
「でも気にはなってたんだろ?」
「う、うるせぇな! それで何を聞きたいんだよ!」
「あいつ、クラスでどんな感じなんだ?」
「………何か気になることでもあったのか?」
「あぁ、腕に痣があった……あれは料理で付くような痣じゃない」
「……そうか……」
「その感じ、何か知ってるんだな」
「……まぁな……」
「原因は俺か?」
「そうじゃねーよ……最近初白さん、二年のイケメンの先輩と仲が良いだろ?」
「あぁ、高弥か……女子生徒から嫉妬でもされてんのか?」
「わかってるんじゃねーかよ……まぁ、そんなとこだ。最近じゃあ女子の中で調子に乗ってるなんて言われてるし……」
「まぁ、確かに調子には乗ってるな」
やっぱりそういうことか……。
前も高弥が仲良くしていた女子は他の女子から良く思われてなかったしな……。
まぁ、仕方ないのかもしれないが……これを高弥が知ったら、またあいつ自分のせいだって言って凹むかもしれないしなぁ……。
「いろいろ言ってるのは、この前教室にいたあの女子達か?」
「まぁ、そんな感じだ……あいつらがうちの教室で言うリーダー格だからな」
「なるほどな……」
リーダー格ねぇ……なんでどこの教室にもそんなんがあるのかねぇ……面倒臭い……。
「お前、初白が好きなんだろ? ならちゃんと見ておいてやれよ」
「な! ば、馬鹿! 俺は別に……」
「あぁ、男が照れてキモイだけだから」
「お前ぶっ殺すぞ!」
「へいへい、なんでも良いけど、お前は教室では初白の味方なんだろ?」
「ま、まぁ……あいつらが嫌がらせしてるからって、みんなそれに従って……俺はそれが気にくわないっていうか……」
「ふーん……」
制服を着崩してるくせに、言うことはまともだなこいつ……。
まぁ、最初に会った時からあんまり悪いやつには思えなかったけど。
こいつはもしかしたら普通に良いやつなのかもしれないな……初白も高弥なんて高望みしないで、大島みたいな奴と付き合えばいいのに……。
俺は大島と話しながら歩いているうちに、いつの間にか俺は自分の家の近くに来ていることに気が付いた。
「お、そろそろ俺の家だ、悪いな付き合わせて……」
「全くだよ、次はないからな!」
「はいはい……ありがとよ」
俺はそう言いながら、大島の元を離れて自分の家に帰ろうとする。
すると、帰り際に大島が俺を呼び止めた。
「おい!」
「ん? なんだ? 手でも振ってほしかったのか?」
「ちげーよ!! 俺も聞きたいことがある!」
「なんだよ、先輩を引き留めるなよ」
「………アンタの噂、結局は何が真実なんだ?」
「あん?」
「俺はアンタが噂の通りの極悪人には見えない……どっちかって言うと……アホっぽい」
「おい、先輩に対してそれはないだろ」
「実際どうなんだよ! アンタ、本当に噂通りのことをやったのかよ!」
「……まぁ、噂も尾びれ背びれが付いて大きくなっちまったから、今はどんな噂が流れてるかなんてわからねーけど……一言言っておくぞ」
「なんだよ……」
「俺はろくでもねぇ奴だよ」
「はぁ?」
「話は終わりだ、さっさと帰って大好きなヤンキー漫画及び極道漫画でも読み漁れ」
「なんで知ってんだよ!!」
「え? マジ? 図星?」
適当に言ったんだがまさか当たるとは、何となく好きそうだとは思ったが、やっぱりこういうやつは読んでるよな、そういうちょっと悪い世界を題材にした漫画。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます