第28話

 それからというもの、俺は初白と弁当作成の練習を始めた。

 卵焼きにから揚げ等々を手作りするというので、俺は初白と一緒にスマホでレシピを見ながら、弁当の試作品を作った。

 意外だったのが、初白が真面目に頑張って弁当作りの練習をしていたことだ。

 俺はてっきりすぐに諦めると思ったのだが、以外にも頑張っている。


「先輩、から揚げってもっとカラっと揚げて良いんですかね?」


「それはこの炭みたいな物体の事を言ってるのか? これ以上カラっと揚げたら、これはマジもんの炭になるぞ」


「から揚げってこんなに難しいんですね……」


「いや、お前が揚げるタイミングがおかしいだけだ」


「二度揚げすると美味しくなるって言いますよね?」


「これを二度揚げって頭沸いてんのか?」


「もう! さっきから馬鹿にばっかりしてないでアドバイス下さいよ!! 油に頭ぶち込みますよ!」


「可愛子ぶりながら恐ろしいことを言ってんじゃねーよ」


 まぁ、頑張ってることは認めるが……こいつは料理に向いてないんじゃないだろうか?

 味付けも変な物ばっかり入れるし、焼すぎるし挙げすぎるし、なんていうか予想通りというか、やっぱりこいつはアホというか……。


「お前は変にオリジナリティを入れないで、普通にレシピ通り作れよ」


「私の個性を出していった方が、私らしさが出て良いかと!」


「それは料理を完璧にマスターしてからにしろ、アホ」


「もぉ! なんで毎回アホって言うんですか! こんなに可愛い後輩なのに!」


「はぁ? どこが?」


「え? なんですか喧嘩売ってますか? 買いますよ」


「お前は可愛いってワードを否定されると素が出るんだな……」


「はぁ……どんどん失敗が増えていきますね……」


「お前が量産してんだよ、そろそろ腹が苦しくなってきた」


「……毎回そんな無理して食べなくても……」


「アホか、もったいねーだろうが」


「でも、失敗した奴ばっかりですよ? お腹壊すかも……」


「そしたら、お前に責任取ってもらうよ」


「え? なんですか? そうやって私にエロい命令でもする気ですか? だとしたらキモイです、近寄らないで下さい」


「お前は少し俺に感謝しやがれ……」


 そんなことを言っている間に、いつの間にか下校時間になってしまった。

 結果、最終的に初白は何も成長しなかった。

 これで明後日弁当なんて作っていけるのだろうか?

 俺たちは見回りの先生から家庭科室を追い出され、今は下校途中のコンビニに居た。


「はぁ……なんか不安になってきました」


「じゃあなんで弁当作るなんて言ったんだよ」


「それは……勢いっていうか……」


「はぁ……勢いだけで何馬鹿な事言ってんだか、このアホは……」


「だからアホっていうのやめてもらえますか!」


「へいへい、ドアホ」


「ドをつけるなぁー!!」


 初白はそう言いながら、ぽかぽかと俺の腹を殴ってくる。

 地味に痛いな……。


「このままじゃ、弁当何て作れないぞ?」


「家に帰って続きを練習します。明日もあるし、多分大丈夫です」


「本当か? 早めに諦めた方が良いんじゃないか?」


「そうかもしれません……でも……楽しみにしてるって……真木先輩が言ってくれたので……」


 初白はそう言いながら、頬を赤く染める。

 理由はどうあれ、こいつは高弥の為に努力している。

 最終的には自分に好意を抱いてほしいからだろうが、それでもここまで努力出来る人間は珍しい。

 だからだろうか、俺は初白の事を放っておくことができなかった。


「はぁ……明日も付き合ってやる」


「え! 本当ですか! まぁ、明日も付き合ってもらう気でしたけど!」


「はぁ……やっぱりお前に付き合うのやめようかな……」


 初白の一言で俺はなんだかやる気を失った。

 しかし、どうしたものだろうか。

 特別美味い物じゃなくても、普通に食える物を作らせないと、高弥が死ぬしな……。

 

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