第25話

「悪いんだけど、初白の奴がスマホを落としたみたいで探してたんだ、教室になかったか?」


 女子生徒三人は俺の顔を嫌そうな顔で見ながら、手に持っていた初白のスマホを差し出す。


「こ、これだと思います」


「そうか、ありがとう。それじゃあ」


 俺はそういって、教室を後にしようとする。

 しかし、教室をでようとした俺と同時に三人の男子生徒が教室に入ってきた。


「あ、悟(さとる)!」


 後ろの一年の女子が一人の男子生徒に向かってそういう。

 

「あ、香奈(かな)何してんだ? それにこいつ……」


 年上をこいつ呼ばわりかよ、今年の一年は礼儀知らずが多いらしいな。


「悪いな、ちょっと通してくれるか」


 俺がそういって、一年の男子生徒の脇を通ろうとすると、男子生徒たちは俺の行くてを遮ってきた。


「おい、待てよ。お前、あの噂の先輩だろ? 香奈に何したんだよ」


「はぁ?」


 なんだか、この男子生徒君は勘違いをしているようだな。

 まぁでも何もしてないし、あの女子生徒が何も変なことを言わなければ……。


「悟く~ん、私怖かったぁ~」


 このクソビッチが!

 死ね!

 なんでいきなりそんな感じ?

 さっきまで平然としてただろうが!!

 俺がそんなことを思っていると、かなと呼ばれた女の子は悟と呼ばれた男子生徒の元に駆け寄って言った。


「お前……香奈に何する気だった!」


「いや、落ち着け一年、俺はただスマホを……」


「私達この人に……ぐすん!」


「おいコラ! そこの尻軽女! お前さっきと態度違いすぎるだろうが」


「香奈は尻軽じゃねぇ!!」


「あ、やば……」


 香奈って子にムカつきすぎて、俺は思わず本音を漏らしてしまっていた。

 やべぇーなぁ……このままだとなんか面倒なことになりそうだなぁ……。


「てめぇ……先輩の言った通り最低のクズだな」


「あぁ、はいはい。そんなの知ってるから、いいからそこどけ一年」


「ちょっと待てよ! 人の彼女に手を出しておいてそれで済むと思ってんのか?」


「誰がそんなブスに手を出すか! 失礼だぞ! 俺だって女を見る目くらいある!」


「いや失礼なのはアンタよ!!」


「てめぇ……どうやらボコられないとその口閉じないみたいだなぁ……」


「おいおい、一年生君。そんなひと昔前のヤンキーみたいなセリフは恥ずかしいからやめろ、こっちまで恥ずかしくなるわ。まぁ、君くらいの年代は好きだよね、ヤンキー漫画とか極道漫画、でもあんまり影響されない方が良いよ?」


「うるせぇんだよ! ほっとけ!!」


 俺はため息を吐きながら、どうやってこの場を切り抜けようかと考えていた。

 ボコボコにされるのはもちろん嫌だし、早く俺は帰りたい。

 俺がそんなことを考えていると、またしても誰かが教室に入ってきた。


「おい、何やってんだよ」


 そう言いながら入ってきたのは、いつだかに俺に絡んできたガラの悪い男子生徒だった。

 確か大島とか言っただろうか?


「複数で一人を取り囲むなんて男じゃねぇーな……」


 いや、それお前が言う?

 お前もまるっきり似たようなことを俺にしたよね?

 俺がそんなことを考えながら、様子をうかがっていると、大島は俺の元に近づいてきた。


「お、お前は!?」


「あのなぁ……一年共、一言言っておくが俺は先輩だぞ」


「な、なんでお前がいるんだよ!」


「まぁ、いろいろあってな、こいつらにボコボコにされそうになってんだ、助けてくれ」


「なんで俺に助けを求められると思ったんだよ!」


「いや、そういうキャラなのかと思って」


「俺はお前が嫌いなんだ!」


「奇遇だな、俺もだ」


「嫌いな相手に助けを求めるな!!」


 俺と大島がそんなやり取りをしていると、喧嘩を吹っかけてきた本人である悟君は俺と大島のアホらしい会話に呆れたのか、ため息を吐きながら教室を出て行った。


「あほらし……行こうぜ」


 そういって、悟君とその場にいた男女五人は教室を後にしていった。

 一体あいつらは俺に何が言いたかったのか……。


「サンキューえっと……ゴンザブロウ君?」


「大島だ! 適当言うなよ!!」


「そうだ、そうだ、ありがとう古関君」


「だから大島だって言ってんだろ! 覚える気あるのか!!」


「ない」


「即答するな!!」


「まぁまぁ。あ、そうだ、これ初白に渡しておいてくれ、落としもんだ」


「え? スマホ?」


「あぁ、頼んだぜ、俺はもう帰りたい」


「待て! なんでお前が初白さんのスマホを!」


「拾った、お前が見つけたっていって初白に返せば、少しは好感度上がるかもしれないぞ。んじゃぁなぁ~」


「あ、おい! ちょっとまて!!」


 俺は大島の言葉を無視して、そのまま教室を後にした。ども

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