第22話

「な、仲いいんですね……」


「まぁ、小学校からの付き合いだからね」


「へ、へぇ……そ、そうなんですね……」


 こっちを見るな!

 仕方ないだろうが、俺の方がお前よりもこいつとの付き合いは長いんだから!

 いいからお前は俺に嫉妬してないで、会話を広げろ!

 お前のトーク力とやらを見せろ!


「じゃ、じゃああの……真木先輩趣味とかあるんですか?」


「え? 僕の趣味? 写真を撮ることかな?」


「へぇ~! そうなんですかぁ~! すごいですねぇ~!」


「うん、いろんな写真を撮るのが好きでね」


「そうなんですねぇ~、カメラとか持ってるんですかぁー?」


「うん、一眼レフ持ってるからね、それで休みの日なんかも撮影に行くんだ」


「すごーい! 本格的ぃ~」


 おぉ、やっと良い感じに会話になってきたぞ!

 初白は思いっきり猫かぶってるが、中々良い感じだ。

 あとは二人が仲良くなった時点で俺がどこかにフェードアウトすれば、後は二人で勝手にいろいろ話始めるだろう。

 俺はそんなことを考えながら、注文したドリンクを飲み、スマホを弄る。


「今度、写真撮ってるところ見せて欲しいですぅ~」


「もちろん良いよ、なんなら今度の土曜日撮影に行くけど、一緒に来るかい?」


「え! いいんですか?」


「あぁ、もちろんだよ」


 お、いい感じだな……デートの約束まで取り付けたか。

 さて、ここまで会話が弾んでれば、あとは俺はいなくても良いだろう。

 さっさと家に帰って、ゲームの続きでもやるか。


「それじゃあ、飲むものも飲んだし俺はこの辺で……」


「平斗も行くだろ?」


「なんでそうなる……」


 高弥、お前はこれ以上を俺を巻き込むな、初白が俺の事を親の仇を見るような目で見てるじゃねぇか……。

 そりゃあ二人きりだと思ったら、実は他にも誰か来るって知ったらそんな顔になるよ。

 いいから二人で行ってこいよ!

 なんで俺を巻き込もうとする!!


「悪いが、土曜日は用事があるんだ、道場の手伝いがある」


「え? 中学で稽古はやめたんじゃないの?」


「それでもうちの道場は家族経営だからな、手伝えるところは手伝わないとな」


「そっか……じゃあ、初白さん二人でもいいかな?」


「はい! 全然大丈夫です!」


 二人きりって聞いた途端初白の声が弾んだ。

 まぁ、これでデートの約束も取り付けられたし、今日のところは上出来だろう。

 俺はそろそろ行くか……。


「じゃあ、悪いが俺はそろそろ……」


「てか、先輩の家って道場なんですか?」


 今度はお前か初白……。

 なんで俺が消えてやろうと思ってるのに、お前は俺の邪魔をしてくるんだよ!


「平斗の家は武術の道場なんだよ、お父さんは道場で師範代をやってるんだ、平斗も昔は道場で稽古を受けてたんだよ」


「へぇ~全然見えないですねぇ~、なんか家に籠ってゲームばっかりしてるイメージでしたぁ~」


「お前は馬鹿にしてるのか……」


 初白め……うまくデートの約束が出来たからって調子乗ってやがるな……。

 てか、なんで俺はこんな奴の為にいろいろ頑張ってるんだよ……。


「平斗は結構強いよ、小さいときからずっとやってるからね」


「へぇ~そうなんですかぁ~すごぉ~い」


「初白、お前はそのムカつく話方をやめろ」


 こいつ、絶対俺のことを馬鹿にしてやがるな……。

 まぁ、きっと高弥と多少仲良くなれてうれしいんだろうが……ムカつくな。

 まぁ、これで今日はもう十分だろう、さっさと俺は帰るか……。


「じゃ、俺はもう帰るからな」


「え? もうかい?」


「あぁ、元から今日は用事もあったしな」


「あ、ごめんね、なんか引き留めちゃって」


「全くだよ」


 俺は鞄を持って席を離れようとする。

 初白は高弥とやっと二人きりになれるとあって、なんだかうれしそうだ。

 さっさとこの場から離れよう……。

 俺がそんなことを考えながら、出口に向かおうとする。

 そして、俺はそこで最悪の人物と再会してしまった。

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