第13話



 僕、真木高弥がファーストフード店のレジに並ぶと、周囲からの視線を感じた。

 こんな事にはもう慣れてしまった。

 僕は容姿が優れているらしく、女性からモテる。

 何度も告白されたり、何度も女性からアプローチを受ければ嫌でも気が付く。

 ポテトだけだと物足りないし、何かもう一品くらい注文しようかな?

 なんてことを僕が考えていると、僕の後ろに最近よく見る女の子が並んだ。


「あ、初白さん」


「ど、どうもです……」


「こんにちわ、初白さんも追加注文?」


「は、はい……」


「放課後ってお腹減るよね? 僕なんか平斗のポテト食べすぎて怒られちゃったよ」


 普通の一年生の女の子……。

 なのに、なんでこの子は平斗と仲が良いのだろうか?

 僕は最近、この子のことが気になっていた。

 平斗は昔のとある出来事のせいで学校では少し浮いている。

 特に女子からはかなり嫌悪されており、話しかけてくる女子なんていない。

 なのに、なんでこの子は平斗とあんなに仲良さげに話をしているのだろうか?


「ねぇ、初白さん」


「は、はい! な、なんですか?」


「初白さんは、なんで平斗と仲が良いの?」


「え? な、仲良くなんてありませんよ!」


「そう? いつも楽しそうに話してるから……」


「べ、別に島並先輩とは仲が良いわけじゃ……私は先輩のこと好きじゃないですし」


「そうなんだ……」


 なんだ、この子も一緒か……。

 僕に近づくために平斗に近づいた、そんな女の子なんて、平斗を嫌悪している子達と何も変わらない。

 この子も一緒……そう思った瞬間、僕は彼女への興味がなくなっていくのがわかった。

 そんな僕とは裏腹に彼女は僕に何かを聞きたそうだった。


「あ、あの……真木先輩」


「ん? 何かな?」


 先ほどと変わらぬ笑顔で僕は彼女にそういう。

 どうせ、今付き合ってる人はいるのかとかそんなことを聞きたいのだろう。

 

「あの……島並先輩って過去に何があったんですか?」


「……え?」


 俺は驚き、思わず彼女の目を見たまま固まってしまった。

 平斗のあの噂は結構有名で、すでに一年生達の間にも流れ始めている。

 なのに、この子はその噂を知らない?

 どうしてだ?


「ほ、本当に知らないの?」


「え? あ、はい……友達がその……みんな島並先輩の事を悪く言うんですけど……その……真木先輩は仲が良いので、何か理由があるのかと思って……」


「……悪い噂って?」


「あ、あの………わ、私も真実が分からないので、こんなことを言うのはなんですけど……とある男子生徒を病院送りにして、しかもその人の恋人を恥ずかしめたとか……」


「……なんで、初白さんは友達の言葉を信じなかったんだい?」


「え? だって……たかが噂だし……それに……島並先輩はそんなことをする人に見えなくて……」


「………」


「え、えっと……何ですか?」


 僕は初白さんのその言葉を聞き、先ほどまでの自分の言葉を思い出して恥ずかしくなった。

 結局僕も彼女の事を勝手に判断して、勝手に人柄を決めていた。

 でも、この子は違う。

 ちゃんと自分で真実を知ろうとしている。

 この子は他の女の子とは違うのかもしれない……。


「初白さん」


「は、はい?」


「君は良い子だね」


「え? ふぇ!? い、いきなりなんですか!」


 急に褒められて照れたのだろうか?

 彼女は頬を真っ赤に染まっていた。

 そんな彼女を見ながら、僕はなんだか少しうれしくなってしまった。

 自分以外にも平斗を理解しようとしている人がいる。

 それだけで僕は彼女と気が合うような気がした。


「平斗のことだよね? じゃあ、今晩教えてあげる。電話しても良いかな?」


「え……ま、真木先輩と電話ですか!? い、良いんですか!!」


「うん、教えてあげるよ。じゃあ、今夜九時頃電話するから」


「え!? あ、はい!!」


 僕は初白さんにそういい、商品を注文して平斗のところに戻った。

 初白さんが真実を知ってどんなことを思うかは分からないが、彼女なんとなく他の女の子とは違う気がした。

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