第9話
「二年の先輩に聞いたんだけど、あの先輩って中学の時、結構ヤバい人だったらしくてさ……」
「ヤバイ? どういうこと?」
あの先輩がヤバイ?
まぁ、私も知り合って一週間も経ってないから私もなんとも言えないけど……。
「聞いた話だと、好きな女子と友達が付き合うのを陰でいろいろやって、阻止してたって! 結構悪どいことをやってたみたいだよ?」
「え、それ本当?」
「うん……先輩の卒業した中学じゃ有名な話らしくてさ。だからあんまり関わらない方がいいよ」
「でも、真木先輩は仲良いよ?」
「それが不思議なのよねぇ~、人気者と嫌われ者、なんで仲が良いか先輩たちもわからないんだって」
「ふーん……そうなんだ……」
「いくら真木先輩が好きでも、あの人には関わらない方がいいよ」
「ありがとう、でも……好きな人の親友だったら、私も仲良くなれる気がする」
「え?」
「だって、好きな人が信じてる人だよ? 私も信じなきゃ、真木先輩を好きになれないよ!」
私は先輩がそんなに悪い人には見えない。
それに、真木先輩が親友とまで呼んでいるのだ、きっとその噂には何か理由がある。
私はそんなことを思っていた。
*
「付き合ってください!」
「……えっと……」
僕の名前は真木高弥。
今は放課後で体育館裏に女子から呼び出され、告白を受けていた。
こういうのは正直苦手だ、僕は女の子と付き合う気なんてさらさらないし、勇気を振り絞って告白してきた子を簡単に振るのも苦手だ。
「あのさ……僕は……その……」
「友達からでもいいんです!」
女の子は僕に頭を下げてそういう。
参ったな……なんて言って断ろう。
僕がそんなことを考えていると、目の前の女の子はさらに言葉を続ける。
「わ、私が真木君を助けてあげるから!」
「え? どういうこと?」
「だって、真木君! 島並から脅されてるんでしょ!?」
「ん? 何が?」
僕は訳が分からなかった。
この子は一体何を言っているのだろうか?
「聞いたよ! 真木君、島並から弱みを握られてて、いつも小間使いにされてるって! あいつ最低だよね! でも大丈夫、私があなたを助けてあげるから!!」
彼女が僕にそういった瞬間、僕は先ほどまでどうやって振ろうかと悩んでいたが、一気に気にする必要がないことに気が付き、彼女に向かって言う。
「友人の悪口を言う子と……付き合いたいと思う?」
「え? あ、あの……真木君?」
「何か勘違いをしてるみたいだね……平斗が僕の弱みを握って小間使いにしてる? 馬鹿じゃないのかい? 僕は平斗に返しても返しきれない程の恩を感じてるよ」
「で、でも……みんなが……」
「みんなって誰? 本人の僕がそう言ってるんだけど?」
「そ、それは……」
「悪いけど、親友の悪口を言う子と付き合えるわけないよ……それじゃ」
僕はそういってその場を後にした。
言われた女の子はぽかーんとしながら、その場に立ちすくんでいた。
彼女は決して僕の前では言ってはいけないことを口にした。
そんな彼女に気を遣う必要なんて感じなかった。
「全く……」
僕は不機嫌になりながら、中庭を通ってそのまま教室に向かった。
教室で待たせている平斗と合流するためだ。
「お、帰ってきたか」
「お待たせ、さぁ帰ろう」
「また振ったのか?」
「あぁ、うん……彼女とは付き合える気がしなくて」
「あの子、うちの学校の二年の中で一番かわいい子だぞ?」
「人間顔じゃないってことだよ。お腹減らない? 何か食べて帰らない?」
「じゃあ、ラーメンでも食ってくか?」
「良いね、じゃあ行こうか」
今、ここに僕がいるのは目の前にいる平斗のおかげだ。
平斗の悪口を言う奴は多い。
でも、それは平斗の噂を聞いただけの評価だ。
僕は平斗を噂だけで評価する人を許さない。
平斗の内面を知らないくせに好きかっている奴を許さない。
こんなにも優しい平斗を悪く言う奴らを僕は許せない。
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