異世界で俺と幼馴染とお姫様と駄女神と?

本田 そう

第1話 プロローグ1 始まりの始まり

 歴史と言う時間内で、人々の命はほんの一瞬の時間でしかない。

だから、その日その日を大切に生きていく。

だが、運命は残酷なもの。

人が生きようと様々な試練を与える。

事件、事故、疫病、そして戦争。


 大陸暦277年、人々の前に突如、魔王が出現する。

 魔王は自分の有り余る魔法の力で、各大陸を支配していった。

 そんな大陸の一つ、ミーカグワ大陸に魔王が攻めようとした時、1人の勇者が魔王と戦い、死闘の末、魔王を封じ込める。

 しかし魔王は封じ込める前に、一つの言葉を言い残した。


 ‥‥‥必ず我は復活する‥‥‥


と。

 

 そして、魔王を封じ込めた勇者をいつの間にか人々は



 ーーー コア ーーー



 と呼んだ。



 それから490年の年月が流れようとしたある日、魔王の四天王と名乗る者が、モンスターを引き連れ、各大陸を支配し始めた。

 あまりの平和が長かった為、コア(救世主)の言葉を忘れ、人々は戦いとは何かを忘れていた。

 その為に、魔王の四天王達は瞬く間に世界の半分を支配しようとしていた。

 そんな中で、ミーカグワ大陸にあるシンメイ王国は違っていた。

 コアの言葉を守り、いつか訪れるであろう、その日に備え、魔法騎士団を結成していた。

 

 コアの言葉、



 ーーー魔王はいつか復活する。その時、私はいない。だが、この日を忘れなければ必ず助かるーーー



 

 シンメイ王国はコアの言葉を守り、いつか来る魔王復活の為に、大陸暦300年に、魔法騎士団を結成させていた。

 だが、時とは残酷な物。

 平和な日々が長過ぎれば、人々の間には、コアの言葉は薄らいで行く。

 そして、用済みと思われるようになった魔法騎士団も世間から白い目で見られ、弱体化していった。

 そんな折の魔王軍の襲来。

 大陸暦760年にシンメイ王国は、何とか魔王軍を退ける事はできたが、隣国は魔王軍の手に落ちた。

 シンメイ王国の魔法騎士団などの多大なる犠牲者と共に。

 

 だが、そんなシンメイ王国にも嬉しい知らせがあった。

 その年、シンメイ王国のアルズ=シンメイ王とユズナ=シンメイ王妃の間に、双子の女の子が産まれる。名を姉がライラ=シンメイ、妹がルイラ=シンメイ。

 この姉妹はとても似ていて、親でも間違えるほど。

 そんな双子にはある違いがあった。

 それは‥‥‥

 


 大陸暦776年、双子の姫は16歳を迎えた年



 「ライラお姉様‥‥‥」

 「なに?ルイラ」



 真剣な表情で話す、ショートヘアーの赤茶色の髪のルイラに、これまたショートヘアーの青髪のライラは不思議な顔をする。

 


 ‥‥‥いつもなら笑顔で「ライラお姉様」と言うのにどうしたのかしら?‥‥‥



 そう思いながら、ルイラに聞く。


 「ルイラ、どうしたの?何か相談事?」


 ライラが笑顔でルイラに言うと、ルイラは言葉を詰まらせながら



 「‥‥‥私‥‥‥」

 「うん?」

 「私‥‥‥魔法騎士団に入ります!」

 「えっ?魔法騎士団?冗談でしょう?」

 「いえ!冗談でわありません!」



 力強く言うルイラに、ライラはまだ冗談を言っていると思いながらルイラの目を見る。

 だが、ルイラの目は真剣そのもの。



 「ルイラ‥‥‥何故、魔法騎士団に‥‥‥」

 「お姉様もご存知のはずです!この国の状態を!9年前に起きた魔王軍のシンメイ王国の侵略の事を!あの時の戦いで魔法騎士団の8割を失いました。それどころか、国を守る為に兵になった男性も、殆ど帰ってきませんでした。今のこの国は、この9年間に僅かに増えた魔法騎士団と女性兵のみ!」

 「ルイラ、私も分かっているわよ。けど、それで何故貴女が騎士団なんかに‥‥‥」

 「お姉様、私の力をこの国に、いえ、この国に住む民の為に使いたいのです!」

 「ルイラ‥‥‥」



 ルイラの決心した言葉に、ライラは戸惑う事はなかった。寧ろ、こんな日が来ると思っていた。

 それは、ルイラには人並み外れた魔力が生まれながらにあった。

 ライラも魔力はある方だが、ルイラ殆どではなかった。

 そんな力を持っているのであれば、ルイラが魔法騎士団に志願したくなるのは仕方ない事。その上、この国の姫様となれば、今の魔王軍や隣国の状態が否応なしにも耳に入る。

 


 ‥‥‥あの子は人一倍、正義感が強い子‥‥‥



 ルイラの決心にライラは言う。

 

 「‥‥‥お父様には言ったのですか?」

 「いいえ‥‥‥けど‥お父様もお姉様と同じで‥‥‥」

 「気付いていたと?」

 「はい」



 ルイラの返事以降、2人の会話は途切れ、その日はそれ以降会話する事は無かった。

 ライラに取ってルイラとの会話が、これが最後と知らず‥‥‥。

 

 

 次の日、朝早くから王の前に、慌てた様に、息を切らせながら兵が報告に来た。



 「アルズ王様!た、大変です!国境から10キロメーベにーーー」

 「どうしたあ!」

 「はあっはい!魔王軍が!魔王軍が攻めてきてます!その数およそ六万!」

 「なあっ!ろっ、六万だと!」



 あまりの驚きに、座っていた椅子から滑り落ちるアルズ王。

 だが最悪のことに、たまたま側にいたルイラにこの事が知られ、慌てる様に走り出したルイラ。


 ‥‥‥私の力で何とかしないと、この国は‥‥‥


 

 ルイラは魔王が迫る国境まで、馬を使い走り出した。


 そして‥‥‥その姿を最後に‥‥‥


 ルイラの姿を誰も見る事は無かった‥‥‥



 それから更に一年の歳月が流れた‥‥‥。




 ◇◇◇




 「タッ!タッ!タッ!」と急いで階段を駆け上がる1人の少女は、右手のドアの前に立ち止まると、「ハア〜」と息を整えると、バタッとドアを開ける。



 「光ちゃん起きなさい!コウちゃん!」

 「‥‥‥zzz」

 「もう〜!コウちゃん!コウちゃんたら!」

 「むにゃ‥‥‥後十分‥‥‥」

 「コウちゃん!‥‥‥だったら」



 そう言うと、白い夏のセーラー服を着たショートヘアーの少女は、ベッドの傍に立つと、



 「お・き・な・さ‥‥‥い!」

 「むにゃ‥‥‥だあっ!」



 ベッドの真ん中に向かって肘打ちを落とした。

 肘打ちを落とされた者はたまったものではない。一声上げると、ベッドの上で悶え苦しんでいる。



 「い、い、痛い‥‥‥な、何するんだよお前は!」

 「だってこうでもしないと起きないじゃないのよ」

 「にしても、毎朝毎朝これじゃこっちの身がもたん!」

 「じゃあ、どうやって起こして欲しいのよ(ちょっと怒)」

 「う〜ん、そうだなぁ〜、優しく抱き締めてくれて、耳元で、『お・き・て♡』と囁いてくれるか、それか目覚めのキスもいいかも」

 「はあ〜あ?私にそれをやれと?」

 「うん。あっ!けど千代(ちよ)には無理か。なんせ毎朝これだもんな‥‥‥イテッ!」


 

 光が皮肉そうに言うと、千代は光の頭をバシッと叩いた。



 「ったく!可愛くないな〜」

 「ハイハイ、私は可愛くないですよ〜だ!にしても光ちゃん、また増えたんじゃないの?」

 「うん?」

 「ガンプラ 。どうせまた徹夜で作っていたんでしょう」

 「別にいいだろ。俺の趣味なんだし。それにコレを作っていると、なんだかこ〜、グッとくるものがあるんだよ」

 


 そう言うと光は、昨晩作った机の上にあるガンプラ を見つめていた。

 


 「ふ〜ん。あっ、光ちゃん!早く起きないと朝ご飯抜きで学校に行く事になるからね!」

 「あ〜、ハイハイ、起きます起きますよ」

 「じゃあ私先に下に行っているから!」

 「へ〜い」



 タッタッタッと階段を降りる千代は、一階に居る光の母親と何か話している声が聞こえた。

 渋々起きる光は、部屋に飾られた何十体かあろうか、飾られたガンプラ を見つめながら



‥‥‥幼馴染の千代(あいつ)にはわかんないだろうな〜、ガンプラ (こいつ)の良さが‥‥‥



 「光ちゃん!」

 「わかった!今行くよ!」



 そう言うと光は、学生服に着替えて階段を降りた。

 

 だが‥‥‥


 この2人が‥‥‥


 暫くして‥‥‥


 この世から消えてしまうとは‥‥‥。

 



 

 

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