コラム1

主夫初日。


当時の僕は32歳。28歳で大学院博士課程を修了し、独法の研究所の研究員となり、この時点では契約上まだ雇われていた。

ただ、フレックスだったことや中期出張が多かったため、いわゆる有休消化というやつで2ヶ月分くらいの自由を得ていた。

ハルは1歳8ヶ月くらいで、保育園に通わせていたので、実質、日中は誰にも邪魔されず、ひたすら家の仕事、いわゆる家事をこなしていた。

日記からも余裕が感じられる。やったことを随分と細かく記録している時点で、余裕だよね。うらやまし〜(笑)


 この物語の主人公であるは、仕事を辞めて専業主夫になったわけだけど、いろいろな手続きを経て、晴れて専業主夫になった。

家族への相談、職場上司への相談、生活環境の整備、親族への告白。

これら幾多の(精神的な)ハードルを超えてやっと専業主夫がスタートしたわけです。

これから、少し時間を遡って、主夫になるまでの経過を載せてみたいと思います。


もちろん、辞めることは簡単な決断ではなく、様々な葛藤もありました。

それに、僕が仕事を辞めるということは、家族だけではなく、職場や周辺関係者にも迷惑をかけたし、大学生の頃からずっと同じ業界にいたので、長いことお世話になった人たちからの期待や信頼を裏切ることになりました。

ただ、当時の僕は、仕事と家庭の間に挟まれ、(僕なりに)精神的にギリギリで、死んでしまおうと思ったこともありました。

とりあえずどこか遠くへ逃げてしまおうと車を走らせているとき、ふと「そういえば、今日はハルの薬をもらいに行く日だった」と思い出し、色々どうでも良くなり家まで引き返した。


他愛もない出来事だけど、やっぱり家族が大事で、死んだりいなくなったりはできない。

一度死んだことにして、家族のために生きよう。そう思うきっかけでした。


それから半年くらい、自分なりに必死に仕事と家庭を両立させようと、時間の遣り繰りをしながら努力してみたのですが、だんだんと仕事の質も落ち、一番大切である真摯に仕事に向き合うことができなくなっていったため、仕事を辞することを決心したのでした。

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