エクスカリバーと魔王の剣

あきかん

エクスカリバーと魔王の剣

 魔王の部屋の扉が開く。腰にエクスカリバーを携えた勇者が我が城に侵入した、との報を聞いたのが半日前。幾千もの配下を屠り、遂に我の前に勇者が現れる。宿命に決着をつける時が来たのだ。


 勇者は魔王の部屋の扉を開ける。雑魚を蹴散らし、魔界四天王をなんとか倒した。絶頂のアルフォンスはその名に違わぬ雄叫びをあげ、小さな穴のエマニュエルには予期せぬ苦戦を強いられ、両刀使いのグリステルとの激しい戦闘で左手は負傷し、最後にあらわれた噴薄激盪のライカルトとは言葉にすることができないほどの激闘の末に勝利をもぎ取った。しかし、これから立ち会うのは魔王。今まで倒した全ての魔族の上に立つ最強の敵だ。

 勇者が部屋に入ると魔王は椅子から立ち上がり此方を睨む。洗練された陶磁のような肌が目についた。白銀の髪から透けて見える切れ長の目には赤い情念の火を宿している。眉目秀麗の噂に違わぬその姿、申し訳程度に胸を隠している薄い布と股袋のみのその服装が魔の王で有ることを物語る。


「勇者よ、待ちわびたぞ。今こそ我が運命に決着をつけよう。」


 魔王はそう述べると股袋を外し魔剣を取り出した。今まで相手にした魔の者たちが霞むほどそれは高く聳え立っていた。


「受けて立つ。誰も抜くことができない我がエクスカリバーの前に敵はない!」


 勇者は高らかに宣言した。そして、腰に巻いた前掛けを剥ぎ取りエクスカリバーを奮い起たせる。最後の決戦が始まった。


 魔王と勇者は歩み寄る。一歩、また一歩。顔が触れ合う距離まで近づいた。剣の頭と頭が擦り合う。まずは小手調べに剣で牽制し合う。


「やるな、勇者よ。しかし、これはどうかな。」


 魔王の手が勇者の上着の内側に忍び込み胸の突起物を執拗に弄る。繊細かつ入念に刺激を与えてくる魔王の指芸は勇者を追い詰める。


「っく、まだこれからだ。」


 勇者は魔王の頭を掴み抱き寄せ口を吸う。魔王の舌に自らの舌を絡ませる。舌と舌との攻防に移り、剣はつばぜり合いになっていた。

 しかし、魔王も攻められてばかりではない。勇者の舌を甘噛みした。反撃を受けた勇者は一瞬たじろぐ。その隙に魔王は勇者の露になっている臀部に手を回し指を押し込む。

 勇者は思わず吐息を漏らした。口を離し頭に回していた手の力が緩む。その隙を逃す魔王ではない。

 魔王は勇者の剣を咥えこんだ。

 熱い。太く硬いだけではない。強く脈動し喉の奥まで入り込んでくる。


「魔王よ、間違えたな。約束された勝利の剣。それがエクスカリバーだ!」


 勇者はエクスカリバーを突き動かし魔王の喉を押し潰す。その激しい動きに思わず身を引いた。その動きに合わせ魔王に近づき押し倒した。


「エクスカリバーを味わえ。」


 エクスカリバーは魔王の中へと入っていった。


 嗚呼、なんて居心地が良いんだ。納める所へ納まったような安心感。

 この肉の壁を味わうように、勇者はゆっくりとゆっくりと押し込んでいく。優しく時に力強く、的確にエクスカリバーに刺激を加える。これが魔王の力なのか,と勇者は思った。

 しかし、これに耐えられぬ勇者ではない。誰にも抜くことができないからこそ勇者の聖剣はエクスカリバーと呼ばれているのだ。勇者は魔王の臀部に激しく腰を打ち付ける。

 魔王は勇者の激しい責めに声を押さえる事ができなくなった。魔王の部屋に響きわたる喘ぎ声は、かつての部下達が聞けば失望しその権威を失った事だろう。ただ、皮肉な事にもうその配下達は勇者に倒されている。勇者と魔王は、ただの男同士としてどちらがより優れているのかを競い合う。純然たる勝負に口を挟む者は既にいない。


 勝負の行方は勇者が有利に進めている。激しく撃ち込まれるエクスカリバーに魔王は反撃する手段を持ち得ていない。魔王は遂に男であることをやめ、女の快楽へと身を委ね始めた。

 そして、魔王の魔剣が脈動し始める。魔剣ダーインスレイブが目覚めだした。勇者の動きに合わせて跳ね上がる魔剣は徐々に魔力を帯始め、赤黒く染まった。

 勇者はエクスカリバーを突き立てるのに意識を奪われ魔王の変化に気がついていない。いや、魔力を帯始めたそれを勝負の決着が着く前兆だと思い込んでいた。

 確かに魔王は淫らに乱れ、目鼻や口とあらゆる穴から体液が飛び散っていた。もはや知性ある生物が発しないような鳴き声を魔王は上げている。それにともない魔剣ダーインスレイブは脈動を強め、遂にはその剣先から赤い血潮を吹き出した。


 赤く染められた床を見て勇者はエクスカリバーを魔王から引き抜いた。約束された勝利の剣。誰にも抜かれる事のない絶対の理は魔王の力を持ってしても打ち破る事ができなかった。

 魔王の魔剣ダーインスレイブがどのような力を持っていたのかは定かではない。しかし、既に縮こまったその魔剣を見るに決着は着いたとみて良いだろう。魔王の脅威は取り除かれた、かに思えた。


「さぁ、国へ戻るか。」


 勇者が立ち去ろうと魔王から目を離した。その隙を伺っていたのか魔王は立ち上がり勇者を押し倒す。仰向けに倒れた勇者は魔王の剣を見て驚愕した。


「その光輝く剣は、まさか、エクスカリバーか?」

「そうだ。お前だけがエクスカリバーの所持者でもなければ勇者でもない。」


 あまりの事態に勇者の動きは止まり、魔王は勇者へとのしかかる。


 「さぁ、飲み込んで僕のエクスカリバー。」

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