第9話 星乃の心を見て

今日は楽しくなるはずだったお泊まり会、俺はあんな事があったら楽しめるはずがない。


「あ! みんな揃ったね。何して遊ぶ何して遊ぶ!」


相変わらずテンションが高いな日奈子は、まあ、無理もないか、日奈子が俺の家に泊まりに来た事はあっても、こんなに大勢で泊まりに来たことはないからな。そう大勢で… 思ったけど男俺だけじゃね?


「あの皆さん、寝るとこなんだけど姉ちゃんの部屋でいいか?」


だが俺の願いは虚しく消え去る。


「やだよ、涼ちゃんの部屋で寝たい!昔もそうだったじゃん」


それは昔の話であって。


「うん、私もせっかく友達の家に泊まりに来たのだ友達の部屋で寝たいな」


それは、女子だけにしてください! 男子に言ったってやばいだけじゃん。


「私もせっかく男の子の部屋に泊まりに来てるから堪の…寝たいもの」


今、堪能したいと言いかけたな。


「桜庭さんって、前に泊まりに来たことあるの? 藤宮」


えっ、それ気になる!


「とりあえず、星乃の質問に答えると泊まりに来たって言っても小五の時一回だけだ」


「本当にそれだけ?」


今日の星乃はグイグイ来ますね、物静かな星乃しては珍しい。


「本当だよ、それ以外来てないよ」


「…良かった」


何が良かったんでしょう?


「あと3人の意見は飲んでやる、じゃあ俺はリビングで寝ることにするよ」


だが俺の意見に述べてくるものがいた。


「ダメだよ!私 涼ちゃんと寝たいもん!」


何をガキみたいなことを!


「そうだな、家の主人である藤宮君をリビングで寝かせられない、ちゃんと自分の部屋で寝ないと」


七瀬さん、男女の区別出来ます?


「肝心の男の子がいないと、あんなことやこんなことができないじゃないですか。ぐふふ」


今日一日このテンションなのかな… ツッコムのやめようかな。


「藤宮、ここで寝ないとダメ…!」


星乃まで言うとは思わなかった、それに上目遣いで言われたら断れないよ…


「分かった、この部屋で寝るから、そのかわり隅っこで寝かせてくれ…」


「まあ、涼ちゃんが近くにいるし良いよ!」


みんなが寝静まったらこっそり抜け出してリビングで寝ようと誓った。


「あ、そうだ、先輩に挨拶をしないとな」


「姉ちゃんなんだけど実は…」


そう、姉ちゃんが日奈子たちを誘った日のこと。


「桜、明日おばあちゃんのとこに行くわよ」


「えっ!」


あら、残念だね姉ちゃん。


「ど、どうしておばあちゃんのとこに行かないといけないの!?」


「桜の顔が見たいんだって」


おばあちゃんも姉ちゃんの顔が見たいからって呼ぶとは…


「涼君は!涼君は呼ばれてないの!」


「それに、桜に渡したい服があるそうよ」


良かったな姉ちゃん。


「それは、明日じゃなくても良いんじゃ…」


「いいから、行・く・わ・よ」


おっと、母さんお怒りで。


「やだ、助けて!涼くーん!」


俺は姉ちゃんの叫びに笑顔で答えた。


「いってらっしゃい!」


「そんなー!」


そして今日の朝、泣きながらおばあちゃんの元に出かけて行った。


「とまあ、そう言うわけだから。姉ちゃん今居ないんだ」


「そうか、なら仕方ないな」


「これは、いよいよあんなことやこんなことが!」


・・・ツッコまないからな!


「これから何しようか? 夕飯までまだ時間あるし」


確かに、今は夕方の5時だし、まだ早いよな。


「ならセリフ当てクイズをしよう」


「星乃、セリフ当てクイズってなんだ?」


星乃はくすくすと笑って答えた。


「アニメのセリフをどのキャラが言ったか当てるゲーム」


面白そうだが、少々アウトな気が…


「面白そうだね! やろうやろう!」


「早速やろう」


早いな!


「第1問、地球のおまわりなめんな。だよ。」


毎度、思うんだが星乃ってなりきるときめっちゃ変わるよな。


「分かったわ! ◯魂の沖田◯悟!」


「正解」


マジかよ。


「第2問、好きでもないのに頑張れることなんかありませんよ、きっと。だよ」


うーん、誰だろ?


「きっとそれ、S◯Oのシ◯カじゃないかな。」


「正解」


水島、なんでわかるの!?


「第3問、ここからはじめましょう、1から、いいえ、ゼロから!だよ」


お、それなら俺でもわかるぞ、さて答え…


「それ、私分かるよ! リ◯ロのレ◯でしょ!」


「正解」


嘘…だろ…


それから数時間後。


「藤宮、一問も答えなかった」


「藤宮君はこう言うの得意な感じがしたがな」


あなた方が早いだけだよ。おっともうこんな時間だ、そろそろ夕飯を作らないと。


「俺そろそろ、夕飯作ってくるわ」


「なら私も手伝うよ」


流石に手伝わせるわけには行かないからな。


「日奈子たちは待っててくれ」


「本当に大丈夫かい、藤宮君に任せてしまって?」


「大丈夫だよ、ここで待ってて」


俺はそう言った後、キッチンで料理を作り始めた。


「さてとりあえず、野菜やら肉を切ろう」


俺が野菜などを切っていると。


「ダメ…そんな強くしたダメ…」


無視無視。


「そんなに激しくしたら!」


「うるさいわ、水島! ただ野菜を切ってるだけだろ!」


そう、俺は野菜を切ってるだけだ。


「いや、野菜の気持ちになってみたらなかなか良くて」


お前はどんなことにでも妄想出来るんだな。


「てか待ってろって言ったろ?」


「いや本当に料理してるのか見てみたくて」


俺がレンチンするとでも思ったのか?


「ちゃんと作ってるから待ってろよ」


「はいはい、待ってますよ〜」


何か水島がボソッと言っていたが気にしなかった。


「本当は顔が見たかったなんて言えませんけど」


水島が俺の部屋に戻ってから数分で俺は料理を作り終えて、料理を自分の部屋に運んだ。

みんなは俺の料理を食べて美味しいと言ってくれた。 美味しと言われて悪い気はしないよな。


「そうだ涼君、風呂いただいてもいい?」


「なら一緒に入ろう、ひかりちゃん!」


「いいよ、桜庭さん」


仲がいいなお前ら。


「そうだ! 絵梨ちゃんと雲母ちゃんも一緒に入ろう!」


「私は構わないよ」


「私は遠慮する」


おや、星乃は入らないのか流れからてっきり入るのかと。


「そっか、なら三人で入ってくるね!」


そう言うと日奈子は水島と七瀬の手を引っ張り風呂場に向かった。


「藤宮、アニメ見よ」


そう言う理由で遠慮したのか。


「いいぜ」


それからアニメを観ながら星乃と色々話していた。


「この子とか可愛いと思わない? 藤宮」


「確かに可愛いなこの子」


星乃はアニメの話をしているととても楽しそうだ。そこに突然、扉を開け日奈子が入ってきた。


「上がったー! 会いたかった!涼ちゃん!」


「バカ! 濡れた髪のままで抱きつくな! 濡れるから!」


こいつは本当にバカだ!風呂に行っていただけで会いたいとか!


「……」


星乃が急に黙り込んだような?


「…私お風呂入ってくる」


「おう、そうか。てかいい加減離れろ!」


それから数分後、星乃は風呂から上がってきたがなんだか元気がないような。


「どうした、星乃? なんか風呂であったか?」


「…何も…」


そうかな? 元気ないように見えるけど。


「じゃあ、俺も風呂入ってくる」


そして俺は風呂場に向かうが風呂場の前で呼び止められた。


「藤宮、ちょといい?」


「どうした、星乃 やっぱりなんかあったのか?」


だが星乃は黙ったままだった。


「本当にどう…」


俺が言い終える前に星乃が喋り出した。


「なんで桜庭さんばっかりなの…?」


えっ?


「なんで私を見てくれないの?」


「星乃、何言って?」


「私を見てよ!」


俺はこの時なんて言葉をかければいいか分からなかった。

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