わかっているぞ?
山の中で二本足で立つ、真っ黒い毛むくじゃらのやつを見た。
「熊だと思っているな?」
「しゃべったからやっぱり人間だったのかと思っているな?」
「着ぐるみだと思っているな?」
「ドッキリだと思っているな?」
「ドッキリとはなんだ?」
「そういうことか。テレビカメラを探しているな?」
「テレビカメラは普通のカメラとは違うのか?」
「スマホで検索するのか?」
「オレも見せてもらってもいいのか?」
「考えるだけで使い方をわかってくれるから母親より覚えるの早いと思っているな?」
「ここのフォルダを見られたくないと思っているな?」
「オマエの性癖画像を集めて隠しているな?」
「オレはオマエを殺したりしないからスマホの中の恥ずかしいフォルダを削除する必要はないぞ?」
「ブラウザのブクマも削除しなくていいぞ?」
「心のメールみたいだと思っているな?」
「そんなに遠くまでは届かないぞ?」
「見えなくなったら読めないし、遠く離れたら読めるのも少しだけになるぞ?」
「遠くにいるやつの心を読めなくとも困ったりはしないぞ?」
「オマエ、オレのこと怖がらないのか?」
「見慣れたら可愛いとか思っているな?」
「オレは人間の姿になったりはしないぞ?」
「だいいちオレはオスだぞ?」
「女体化もしないぞ?」
「オレたちのメスもオレとよく似ているし美少女だったりもしないぞ?」
「裸は恥ずかしくないぞ?」
「人間の裸にも興味ないぞ?」
「よくしゃべるやつだと思っているな?」
「のどが乾いたら川の水を飲むぞ?」
「普段食べているのはキノコやどんぐり、苔とか果物とかだぞ?」
「草食だぞ?」
「昆虫も食べないぞ?」
「人間の食べ物は美味しくないから好きじゃないぞ?」
「全部食べて試したわけじゃないぞ?」
「変な臭いがするから食べなくともわかるぞ?」
「天然素材だけなら大丈夫かもと思っているな?」
「ボンタンアメはオススメだと思っているな?」
「確かにボンタンアメはうまいな。これなら好きだぞ?」
「オマエはエロいけどいいやつだな?」
「エロいけどは余計だって思っているな?」
「もう一度言うけどオマエはいいやつだぞ?」
「実は自殺を止めにきてくれたのかもと思っているな?」
「たまたまだぞ?」
「オマエにそんな勇気がないとは思ってないぞ?」
「でもオマエが死んだらオレは悲しいぞ?」
「オレは嘘をつかないぞ?」
「つらいことが立て続けにあったって全部わかっているぞ?」
「オマエが悪くないこともわかっているぞ?」
「でも、オマエはきっとまた立ち上がれるってわかっているぞ?」
「オマエ自身もきっとわかっているはずだぞ?」
「そうか。帰る決意を固めたな?」
「つらかったらまた遊びに来てもいいぞ?」
「お礼に残りのボンタンアメを全部あげようと思っているな?」
「ボンタンアメはうまかったが一番外側の包装は土に還らないからいらないぞ?」
「落ち込むことはないぞ?」
「人間の罪をオマエが一人でかぶることはないんだぞ?」
「そうだ。オマエができる範囲のことをすればいいんだぞ?」
「一人で背負い過ぎるんじゃないぞ?」
「何度でも言うけどオマエはいいやつだぞ?」
「オマエと一緒にいると楽しいぞ?」
「オレのこともいいやつだと思っているな?」
「また会いたいと思っているな?」
「オレもまた会いたいと思っているぞ?」
「今、オレも同じこと考えているぞ?」
山の中で出会ったあいつのおかげで、僕は今もこうして人生を踏ん張っていられる。
<終>
さとり
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