9. 星がみたいの

「曇ってる」


 少女はむむっと夜空を見上げた。

 丘の上で寝そべっている。耳元で草がさやさや揺れる。

 見上げた空には星一つ見えない。

 分厚い雲が空を覆っていた。


「星見えない」

「星が見たいの? いいわ、叶えてあげる」


 少女のとなりで寝そべっていた女性がくすりと笑った。


 女性は細い指を口元に添えて、ふっと夜空に息を吐いた。


 吐息はきらきら光って夜空に吸い込まれていく。


 すると突然、雲がとけていった。

 それは一瞬の出来事で、次の瞬間には隠れていた星たちがみえる。

 満点の星空だった。


「すごい! お星さまいっぱい! ありがとう!」

「いいのよ」


 だって私は優しい魔女だもの。

 魔女はウインクをした。

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