3. 青い花の海

 一面の花だった。

 青くて、小さな花が見渡す限りに咲いている。

 まるでこの世界が全て花で埋め尽くされたのかと見紛うほどに、花しかなかった。

 この花は、なんという名前だっただろうか。

 青空と青い花。境界線がおぼろげで、溶けてしまった。

 風が吹いて、花弁と彼女の髪を巻き上げた。


「ねえ」


 振り向いた彼女は鬱陶しそうに髪をおさえた。


「すごく美しいものを見ると、なぜだか死にたくなるの。分かる? 今すごく死にたい」


 空と、花と、彼女をみて、僕は笑った。


「そうだね、死にたいな」

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