第46話 新事実に驚く侯爵と子爵夫人

 なんでいきなり、カイルがオルドン王国へやってきたのか。

 エルドおじさんが無事にアストリアについているのは、サカエラのおじさんから聞いていたけれど、王太子が急に隣国に来たりするもの!?

 私は隣に座るおじさんを見ると、困ったような顔になっている。その奥に座るショーンさんに至っては、訳が分からないという顔だ。

 おじさんは折り返しカイルへと連絡をいれると、すぐに返事が返ってきた。


「……今は王城にいらしているそうです。王族の方々とのご挨拶が済んだので、すぐにいらっしゃるとか。侯爵様、こちらのお屋敷をご案内してしまいましたが、よろしかったでしょうか」

「構わない。何度もお時間をとっていただくわけにもいかないだろう」


 侯爵様を目の前にして、ショーンさんやおじさんと話をするわけにもいかず、私は目の前のティーカップを手にする。

 

「それにしても、サカエラ、なぜ、アストリアの王太子がいきなり出てくるのだ?」


 困惑気味のダルン侯爵。それはそうだ。普通、私たちのような平民と王族が繋がりがあるなんて、思いもしないだろう。


「はぁ……実は」


 おじさんは、友人(エルドおじさんのこと)に、今回のマイア―ル男爵家とのことを相談していたことを話した。


「エルドさん?」

「ファルネーゼ子爵夫人は何度か会っているはずなんですが」

「名前には覚えがあるんだけれど」

「メリンダが宿に泊まらせていたと思うのですが」

「ああ! 体格の立派な方ね。その方が?」

「あー。えーとですねぇ……彼は……アストリア国王なんです」

「は?」


 ダルン侯爵と子爵夫人が固まった。同じようにショーンさんも。


「国王陛下?」

「はい」

「あの方が」

「はい」

「国王陛下?」

「そうです」

「……なんですって!?」


 そう叫んで立ち上がった子爵夫人。そうよね。そうなるよね。

 おじさんの身分を知った時の自分を思い出し、遠い目になる。

 子爵夫人が呆然としたままストンとソファに座ると、今度はダルン侯爵がおじさんに問いかける。


「し、しかし、どうやってアストリア国王と知り合いに」

「学生時代からの友人なんです……それにメリンダの夫だったレオンも」

「もしや、サカエラはアストリアの学院に留学していたのか」


 おじさんは困ったような笑みを浮かべながら頷く。


「そ、それにしたって、王太子が出てくる理由があるまい」

「あー、それがですねぇ」


 サカエラのおじさんが言葉をつなごうとした時、サロンのドアがノックされる。


「入れ」

「失礼いたします」

「ロイドか、どうした」

「は、あの、お客様がいらっしゃいましたが……」

「うん? どなただろう」

「えーと、アストリア王太子殿下と名乗ってらっしゃるのですが」

「な、何っ!?」


 カイル、早すぎでしょ!

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