第301話 共闘
「す、助太刀?」
一瞬、耳を疑った。
魔族六将のひとりであるガルガレムが、俺の助太刀に名乗りを挙げたのだ。
……何か裏があるのか?
最初はそう思ったが、
「迷っている暇はないぞ!」
鬼気迫る表情のガルガレムを見て、俺は決心した。
「分かった。感謝する」
「そうこなくては!」
魔族六将との共闘――これまでの戦いでは、絶対にあり得ないと思っていたが……このガルガレムは違う。これまで戦ってきた魔族六将とは、明らかに雰囲気が違った。
それに……魔人族と融合したハリエッタの実力は未知数。
ただ、これだけは言える――同じように魔人族と融合した、ダビンクを襲った時のガナードとは違う。こちらの方が強い。
「魔人族と人間が手を組むなんて……ああ、そういえば、あなたの店にも魔人族が働いていましたね。名前はケーニルでしたか」
「ケ、ケーニル!?」
ハリエッタがケーニルの名前を出した途端、ガルガレムの様子が一変する。
そういえば、彼の部下であるザイーガという魔人族とケーニルは師弟関係のようだったな。
ガルガレムが驚く理由はそこにあるのか――などと考えているうちに、ハリエッタの姿が消えた。
「っ!」
しまった。
そう思った時には、目の前に見失ったハリエッタの姿があった。ほんの一瞬の油断をつかれて距離を詰めてきた彼女は、ニッと不気味に笑う。
――だが、次の瞬間、
「ふん!」
気合の入った声がすぐ真横から聞こえた――と、その直後、俺とハリエッタを引き離すように、目の前を紫色の炎が横切る。
「くっ!」
魔力をまとう炎は、ハリエッタへ絡みつくよう迫っていく。なんとかして振り払おうとするハリエッタは俺から距離を取り、風魔法を駆使してかき消した。
一体、あの炎は……って、疑問に思うまでもない。
「我が炎を消すか‥…」
焔掌のガルガレムが、魔力を使って生みだした炎であった。
戦闘態勢を取るガルガレム――そのスタイルは格闘戦主体のようで、武器は一切手にしていない。己の拳と足が武器ってわけか。
しかし、だからといって近接戦闘しかできないというわけではない。
先ほどのように炎を飛ばすことで、遠距離からでも攻撃が可能というわけだ。
しかもあの炎は……並大抵の使い手に出せるレベルではない。
そこはさすが、魔族六将といわれるだけのことはある。
――が、問題なのは、
「魔族六将ガルガレム……厄介ですね」
そうは言いつつも、表情には余裕がうかがえるハリエッタ。
あの一撃を見せつけられても、なおそんな態度でいられるということは……彼女はそれを凌ぐ力を秘めているということ。
一体……何をする気なんだ?
「――考えていても仕方がない」
俺は魔剣に魔力を込める。
この場を切り抜けるためにも、全力でハリエッタに挑む。
さあ、ここからが本番だ。
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