第285話 アルヴィンVSシューヴァル
「聖騎士ロッドの弟子……俺の期待を裏切らないでくれよ?」
「さて……どうかな」
魔族六将のひとりである氷雨のシューヴァル。
ダビンクの町を壊滅寸前にまで追い込んだ魔人族。
そして――ガナードを殺した相手。
俺をパーティーから追い出したガナードだが……聖剣の力を完璧に発揮できていた頃ならば、あそこまでいいようにあしらわれることはなかっただろう。
聖剣の力に溺れ、堕落していったガナード。
もし彼が、真摯に己の役目と向き合い、世界の平和のために聖剣の力を使っていたのなら……また違った未来が待っていたはずだったのにな。
「ふっ、おまえはやはりガナードとは違うな」
「何っ?」
シューヴァルは俺がガナードのことを考えていたと読み取ったのか、そんなことを話し始める。
「ヤツは俺の魔力を肌で感じた瞬間に負けを悟り、早々に降参した」
「! ガナード……」
なるほど。
だから、ガナードはヤツの実験体となったのか。
命を助けてもらう代わりに魔人族の配下――いや、この場合は実験道具というべきなのか。ともかく、いいように扱われていただけってことだ。
「なかなか興味深いものだったよ。聖剣に選ばれ、かつては救世主として人間たちの希望だった男が、自らの命惜しさにあっさり裏切り、人間たちの敵に回ったのだから。魔人族である俺が言うのもなんだが、度し難い男だったよ」
煽っているつもりなのか、シューヴァルは饒舌に語った。
俺としては、あまり心境の変化はないんだがな。
「さて、すっかり話題が逸れてしまったが……そろそろ始めようか」
シューヴァルがそう言い放った直後――ヤツの姿が消えた。
「!?」
途端、背後に強烈な魔力を感じ取って魔剣を振りかざす。
いつの間にかすぐ近くまで迫っていたシューヴァルは、俺を両断しようと脳天目がけて魔剣を振り下ろすが、なんとかこれを回避する。すぐさま体勢を立て直し、今度はこちらが仕掛けた。
金属がぶつかり合う鈍い音が響き渡る。
魔剣同士の鍔迫り合い。
互いの魔力が接触するたびに、衝撃が辺りを襲う。
瓦礫はさらに細かく砕け、足元の地面にはヒビが入った。
「やるなぁ……おまえこそ人間にしておくにはもったいない!」
「その言葉は前にも聞いたよ!」
言い終えると、まったく同じタイミングで俺たちはさらに踏み込む。
すると、強力な魔力による至近距離でのぶつかり合いにより、猛烈な反発が発生して俺とシューヴァルは吹っ飛ばされた。
「ぐおっ!?」
「ぬうっ!?」
初めての現象に戸惑いながらも、俺は再び構え直す。
シューヴァルもすぐに臨戦態勢へ移行する――が、その時、遠くの方で何やら声が聞こえた。
しかも複数人……もしかして、騎士団の増援か?
「邪魔が入ったか」
シューヴァルはそう言うと魔剣を下ろした。
「おまえとの勝負はお預けだ」
「何……?」
「ここで決着をつけてもよかったが、こちらにもいろいろと段取りがあるんでな。続きは魔界でしようじゃないか」
「魔界……」
「おまえにそこまで追ってこられる度胸があればの話だが」
最後に不敵な笑みを浮かべた後、シューヴァルの体を光が包み込む。その眩しさに一瞬目をそらし、視線を戻した時にはもうシューヴァルの姿はなかった。
「転移魔法か……」
それも、魔界と人間界を行き来する高等魔法――次元転移魔法だ。
「――って、そうだ! みんなは!」
シューヴァルの気配が完全に消えると、シェルニやフラヴィアたちを思い出し、俺は駆けだした。
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