第154話 窮地
【お知らせ】
新作投稿しました!
「マイホーム・ドラゴン ~手乗り霊竜とその孫娘を連れて行く自由気ままな冒険譚~」
https://kakuyomu.jp/works/1177354055033755686
ほのぼのストーリーになる――はず?
是非、読んでみてください!
第2話はこの後、19:00より公開予定!
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魔族六将出現の可能性を王都へ伝えるため、レオルの町から旅立った使いはエルドゥーク王都を目指す。
――が、王都ではすでに新たな魔族六将の登場への対策会議が行われていた。
実は、鉱山の地質調査に参加していた数名の兵が、偶然にも人々が銅像化される前に周辺調査のためテントを離れていたため助かっていたのだ。
王都へ駆け込んだ兵たちはすぐに鉱山で起きた出来事を報告。
事態を重く見た騎士団は、救世主ガナードへ討伐要請を決めたのである。
◇◇◇
「――と、いうわけだから、君たち救世主パーティーにはこれより魔族六将討伐に乗り出してもらうよ」
会議が終わった次の日。
王都の一室に呼び出された救世主パーティーに、騎士団長ジェバルトはそう指示を出した。
「とうとう来たわね……」
御三家の一角――ハイゼルフォード家のリュドミーラは緊張の面持ち。タイタスとフェリオも緊迫した様子。
三人の視線は、自然とひとりの男へと向けられた。
「…………」
腕を組み、俯いたままのガナード。ジェバルトからの討伐要請を耳にしても何もしゃべらず、何かを考えているようだ。
リュドミーラたちには懸念事項があった。
それは、光を失ったガナードの聖剣について。
魔族に対して絶大な威力を発揮する――とされている聖剣だが、デザンタ戦もレティル戦も、本来の力を発揮できずにいた。
おまけにその光は未だに戻らず。
このままでは苦戦は必至だ。
「何やら熟考しているようだけど、問題でもあったかな?」
相変わらず、屈強な騎士たちをまとめる長とは思えない軽い口調で尋ねるジェバルト。
「いや……問題ない」
「そうかい? じゃあ、明日にでも出発してもらうよ」
「分かった」
聖剣を握るガナードの手に力がこもる。
ガナードたちにとって、次は負けられない一戦となるだろう。
それを理解しているから、リュドミーラたちは何も言わないのだ。
「では、早速デイゼン地方へ向かう馬車の手配をしないとね」
「? デイゼン地方だと?」
ジェバルトの言葉に、ガナードは首をひねった。
確か、使いの話では銅像にされた人々がいるのはレオルという町だったはず。そこはレイネス家の領地であり、デイゼン地方はまったく正反対にあるエルブリーズ家の領地である。
「ああ、レイネス家の方はいいんだ。あっちはレティルを倒した魔剣使いにお任せすることに決まったから」
「!? ど、どういうことだ!?」
てっきり、レイネス領地に出現した鉄塊のアイアレンを討伐するのだと思ったが、どうやら違うようだ。
目的地が違うということは――
「ま、まさか……他にも魔族六将が?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 君たちが相手をするのは《鉄塊のアイアレン》ではなく、デイゼン地方に出現した魔族六将――《氷雨のシューヴァル》だよ」
「「「「!?」」」」
救世主パーティーの表情から血の気が引く。
氷雨のシューヴァルといえば、アルヴィンの師でもある伝説の聖騎士ロッドでさえ叶わなかった強敵。噂では、魔族六将の中でもトップクラスの実力者とされている。
「レティルを倒した彼――アルヴィンくんだっけ? 彼にシューヴァルを相手するのは荷が重いんじゃないかなと思ってね」
「そ、それは……」
「レイネス領地に現れた鉄塊のアイアレンについては、明日僕が騎士たちを率いて応援に行くつもりだよ。アルヴィンくんは魔族六将に勝ったとはいえ、相手は最弱候補とされる深緑のレティルだからね。鉄塊のアイアレンは間違いなくレティルよりも強い――それも数倍ね」
同時に現れたふたりの六将。
鉄塊のアイアレンと氷雨のシューヴァル。
そのうち、六将最強と目される氷雨のシューヴァルを相手にすることとなった救世主パーティー。
誰もが言葉を失っていた。
「ここでふたりを同時に撃破できたら、我らの魔王討伐は一気に進む。残りのふたりに関しては情報不足だけど……戦況が圧倒的優位となるのは間違いない。よろしく頼むよ」
そう言って、ジェバルトは部屋をあとにする。
こうして、救世主パーティーは窮地へと追いやられた。
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