Soul Keeper(s) 外伝
HalTo
第1弾 Another Moon
1話 縁あれば銭里
※注意※ これはSoul Keeper(s)本編 37話と38話の間の話になります。
本編37話まで読んでいただくとこの作品をより一層楽しんでいただくことができます。
2015年 とある町で
桜も青々と茂り、夏の訪れを感じ始める梅雨前の出来事。
校門を出るには少し…いや、かなり早すぎる時間に出る1人の男が居た。
彼の名は「
彼はどこかへと急ぎ足で向かっていく。
「うぅ…誰か…うぅ…。」
「!?」
九条の前にボロ雑巾のような見た目の男が這いつくばっている。
「何だ…?テメェ…。」
「いやー!!」ガツガツ「助かりましたぁ!!!」ムシャムシャ「あんたは命の恩人ですよぉ!!!!」モグモグ
「…。」
先程まで這いつくばってたとは思えないほど豪快にチャーハンを頬張る男。
「あっ!!!」バリバリ「俺!!!!」ムシャムシャ「俺!!ふぐぅ!?…ゲホ!!ゲホッ!!!!!」
「水を飲め、食べ終わってから話すといい。」
九条は水を差し出す。
「ぷはぁー!!、ごちそうさまでした!!!いや、本当にありがとうございました!!!!」
頭を下げる男。
「人助けは趣味じゃないんだがな…ところで、名前は?」
「あっ、俺の名前は「本田
訊き返す。
「「九条」。「九条 界人」だ。ところで本田、お前に何があった?」
「1ヵ月以上前になるんですかね…人を…轢いてしまったんですよ。」
九条の目つきが変わった。
「そこからです、何もかもおかしくなりました。」
「…。」
「俺はトラック運転手だったんで轢いた少年は間違いなく死んでいると思いました。でも念の為、というかルールなんで。車から降りて様子を見ながら警察を呼ぼうとしました。ですが…。」
本田は一呼吸おいて言う。
「少年、いや、奴は起き上がったんです。そして奴は唸りながら一瞬のうちに姿を消しました。」
「姿を…?」
九条は訊く。
「ええ、そして殴られました。消えるって言うたとえが正しいのかはわかりません。ですが…そんなパンチを叩きこまれて。気づいたら朝でした。」
「消える…だと?」
九条は廻 喪介を思い出した。
確かに喪介は消えるパンチを限定的だが放つことができる。
「え?ええ、それからというもの仕事はクビになり、家も失い…もう駄目だとおもっていたところにつばの広い帽子と長いコートを着た男に煙をかけられて…。」
「煙…だと?「煙の男か」…。」
「え…何か知ってるんですか?」
本田は訊く。
「いい、続けろ。」
「あ、はい。そこからはあまり覚えてないのですが気が付いたらこんな状態で…それで1ヵ月近く過ごしてました。」
本田は水を飲む。
「なるほど…じゃあこれが見えるか?」
九条は機械でできた拳のミタマ『
「えっ!!!それは…!!」
驚く本田。
「やはりか。こいつは『proto-Z』。ミタマっていう背後霊みたいなもんさ。お前にも憑いてるはず。」
「こいつですか…『ライデンシャフト』。」
形容するとすればマグマの魔人、そんな風体のミタマが出た。
「能力は…灼熱です。」
「なるほど…あっ、時間だ。ここでおとなしく待っててくれ。」
九条は支度を始める。
「他の人は大丈夫なんですかぁ!?」
本田は訊いた。
それもそのはず、年齢的にも、部屋の広さとしても一人暮らしとは到底思えない様相だからだ。
「他に人は住んでねぇ。」
九条は答える。
「今はな…。」
九条は玄関を開け、家を後にした。
「いってらっしゃい!!!!」
九条は自転車で走る。
そして止まる。
郵便ポストにいくつかの郵便物を入れる。
再び走り出そうとした時。
キキキキキキキィギィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!
近くを走っていた大型バスがけたたましい音を立てながら大きくスリップした。
「!!!!」
ミタマを出し、止める。
辺りは騒然とする。
(こんな時期にスリップ…妙だ。)
九条は辺りの霊力の感知を始めた。
(そこか!!)
ミタマ使いの霊力を感知し、その方へと目をやる。
サラリーマン風の男だ。
男は逃げる。
「待て!!!」
九条は自転車で追いかける。
霊力を使い、通常の3倍以上の速度で漕ぐ。
「『proto-Z』!!!!!」
九条はミタマで逃げる男を後ろから殴る。
「ぐはっ!」
男はふっ飛ぶ。
「風紀委員長に連絡するか…俺も急ぎの用事があるんだがな…どいつもこいつも。」
倒れこんでいる男の元に自転車で迫ろうと水たまりを走ろうとしたその瞬間。
ツルッ
「何ッ!?」
九条は盛大にこける。
水たまりは凍っていた。
「うう…。」
男は起き上がり、その隙にとばかりに逃げ去った。
「クソ!待て!!!」
九条は起き上がろうとする、が地面に張った氷が九条の足を覆い始めていたためそれはかなわなかった。
「チッ、『proto-Z』!!!」
拳で氷を叩き割って追いかける…。
「クソ、見失ったか。風紀委員長には一応
携帯をいじった後、九条は再び自転車を漕ぎだした。
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