第4夜 女が見ていたのは

私は猫が好きで、野良猫を見かけるとつい追いかけてしまいます。


この間、可愛い白猫を見つけて追いかけていたら、猫がコインパーキングに逃げ込み、停めてあった車の下に入ってしまいました。

私は周りを見回して、誰も見ていないのを確認してから(車上荒らしと疑われるのが怖かったためです)、車の下を覗き込みました。


髪の長い白い顔をした女がこちらを見ていました。


私は驚いて、すぐに顔を引っ込めました。

起き上がって車の向こう側を見ましたが、そこには誰もいませんでした。

しばらく経って、そのコインパーキングでは練炭自殺があったと知りました。

停めた車の中で、若いカップルが心中したそうです。


考えると怖いのですが、あの女の目、おそらく私を見ていたのではないんですよ。

車のこちら側、つまり私のすぐ近くに、彼女の愛した男が同じように覗いていたんじゃないかなって、なんとなく思うんです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る