第42話 グラッチ!
スクエは数メートル先に居るリプレスに向かって走り、何やら呟く。
「グラッチ!」
スクエが呟いた瞬間に手に持っていた鉄パイプが赤く光出した。
「ど、奴隷如きがリプレスに歯向かうつもりか!」
どうやら、常に見下して来た人間に歯向かわれる事にプライドを刺激された様で男は防御体制を取る。
恐らく、スクエの攻撃を受けてから攻撃しようと思っている様だ。
そして、それを見ていたヴーヴェも多少傷が付くのは仕方ないかと思ったのか小さいため息を吐き言い放つ。
「殺すなよ」
「はは、分かっていますって!」
そして、スクエは鉄パイプをリプレスに振り下ろす為に左足を前に踏み込む。
「オラッ!」
赤く光っている鉄パイプをスクエは力一杯振り下ろした。
そして其れを受け止めようと腕を顔の前に出すリプレス。
「お前如きの力でリプレスに傷付けられると思うなよ!」
リプレスは攻撃を受け切ったら直ぐに反撃しようと、右腕は既に脇に持っていき、何時でも拳を放てる状態にした──しかし、その右拳がスクエに放たれる事は無かった。
「「「「「──ッな?!」」」」」
その場に居るスクエ以外の全員が驚いた様子を浮かべた。
なんと、スクエが振り下ろした鉄パイプはリプレスの事をまるで豆腐でも斬るかの様に真っ二つにしたのだった……
「──はは、流石オレだぜ!」
どうやら、スクエは既に何故この様な力が自身にあるのか知っている様子であった。
そして、スクエの攻撃を受け、真っ二つになったリプレスは地面に倒れ込み動かなくなる。
誰もが驚き、開いた口が塞がらない。
だが、そんな事を気にする様なスクエでは無く、次にノラの周りに居るリプレス達に向かって走り出す。
「お、おい──奴隷が来るぞ?!」
何が起きているかは、スクエ以外には理解出来ていない為、慌てるリプレス達──その間にスクエは又もや赤く光っている鉄パイプを一体のリプレスに向かって振り下ろす。
「──ッふん!」
何か武道等をやっていた訳では無いスクエ──素人が力一杯鉄パイプを振っているだけの筈なのに、リプレスは面白い程簡単に切断される。
「はは、二人目──次行くぜ?」
又もや綺麗に真っ二つにしたスクエはニヤリと笑う。
そして近くに居たリプレス二人に向かって次は横に振り払う形で鉄パイプを右から左に向かって振り切った。
すると、先ほどと同じ様に次は横にリプレスが切断され腰から上と下に綺麗に切れてしまう──しかも次は二人同時にだ。
「四人目──次!」
立て続け様に仲間を壊されたリプレス達だが流石に正気に戻ったのか、スクエに向かって攻撃を繰り出そうとする。
しかし、スクエには関係無かった……
一人のリプレスがスクエに向かって強烈な蹴りを繰り出す──スクエは、その蹴りに合わせる様に鉄パイプを下段から斜め上に向けて気合を入れて振り上げる。
「──ッんな、蹴りが何だよ!」
すると、リプレスの足がボトリと地面に落ちる。
「な、なんだと……?」
何故、たかが人間であるスクエにこの様な事が出来るのかと信じられないリプレスは片足で立ったまま、地面に落ちた自身の脚に目を向ける。
「よそ見している暇なんてあんのか?」
不敵な笑みを浮かべたスクエに反応したリプレスは片足を使って全力で後ろに向かってスクエから距離を取ろうとするが既に遅かった。
スクエは流れる様な動きで更に足を前に進め、距離を詰めて次は上段から下に向かって再び斬り付ける。
そして、また見事に真っ二つになったリプレスが地面に転がる。
「五人目ッ!」
流石にここまで来るとスクエが普通の人間では無い事に気が付くリプレス達はスクエから少し距離を取った。
その事に気が付いたスクエは急いでノラの元に駆け寄る。
「ノラ!」
元々、中古のパーツを使用していたのが原因か、所々部品が取れており、白衣も脱がされていたりして、肌がかなり露出していた。
「大丈夫か!?」
スクエの声に反応をしないノラ。
「お、おい……どこか壊されたのか?」
ノラからの反応が無い為心配になるスクエ。
「スクエ……お前に……何が起きている?」
未だ理解が及ばない様子のノラは、緊迫した状況にも関わらず質問する。
そんなノラを見て、スクエはいつもの小生意気そうな笑みを向けてノラに話す。
「はは、俺の職業をスキャンしてみろよ」
「職業だと……?」
ノラはスクエに言われた通りスキャンを開始する──そして直ぐに結果が出る。
「ヒーロー……?」
「はは、そういう事だ!」
どうやら、以前まで職業が????だった筈のスクエだが、今ではヒーローになっている様だ。
ノラは思考が付いていない様で混乱している。
「ヒーローなんて、そんな職業は知らないぞ……?」
そして、スキャン結果には職業の説明も載っている様で、ノラは無意識に声を出して読み上げる。
「人間を救う者……そして、リプレスの天敵……」
スクエの職業をスキャンしていたのはノラだけでは無い様でヴーヴェも同じくスキャンしていた様だ。
「ヒーローとはなんだ……?」
普段から常に威厳があるヴーヴェだが、聞いた事の無い職業と目の前で仲間が簡単に五人破壊された事により、流石に表情が崩れる。
そして、スクエは再びリプレス達の方に向く。
だが、先程と違うのは、その隣にはノラの姿もあった。
「ノラ、大丈夫なのかよ?」
「あぁ、大丈夫だ」
「無理しなくても俺が全員倒すぜ?」
「はは、生意気な奴め──だが少しは私も戦わないと身体が鈍るからな」
「あはは、分かった。なら一緒に悪を倒そうぜ」
「承知した」
人数では、まだ圧倒的にヴーヴェ側が多い筈なのに、表情は先程とは逆でヴーヴェ達は目を見開き、スクエ達は不敵に笑うのであった……
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