第10話 リプレスとイナメイトとは?
スクエは自分なりに整理している様子だが、そんな様子を見てノラが呟く。
「少年よ、あまり賢そうな顔付きをして無いのだから無理をしないで一度一息付いたらどうだ?」
「あぁ……そうだな……」
──ん? 今、俺馬鹿にされたか?
スクエはノラを見るが微笑む様に首を傾げている。
──気のせいか。
「とうやら、本当に我々が住む世界の事が何も分からない様だな」
「あぁ、何一つ分からん」
「宜しい、それでは私がこの世界の事を簡単に説明してやろう──その前に自己紹介をしようではないか」
「自己紹介?」
「あぁ、いつまでも少年と言うのは味気ないしな──私はノラと言う、一応科学者と言う感じで色々な物を作る事が趣味だ宜しく」
ノラはスクエに向かって手を伸ばす。
「俺はスクエだ、趣味はアニメやヒーロー映画などを見る事で歳は22歳だ。よろしくな」
お互い手を上下に何度か振り手を離す。
「スクエか良い名だ」
「あ、ありがとう……」
名前を褒められる事など普通は無いので少し嬉しそうなスクエである。
「ちょっと待っていろ、今飲み物を持ってくる」
「い、いや遠慮しとく……」
「ふふ、安心しろ──次は飲める物を出すから」
「なら最初から出してくれよ……」
不敵な笑みを残してノラは一旦居間を出た。そしてスクエは壁に貼られている人間三原則をもう一度見る。
「これロボット側は人間に対してやりたい放題じゃねぇーか?」
壁に貼り付けられている紙を見ているとノラは直ぐに戻って来て話の続きが再開された。
「まず、この世界はロボットが支配していると説明したな?」
コクリと頷くスクエ。
「ロボットの中にも二種類あるんだ」
「二種類?」
「あぁ、私みたいな自分の意思を持っている者をリプレスと言い、感情の無いロボット──いわば我々リプレスの生活を快適にする為に働く者をイナメントと言う」
二種類のロボットがある事にスクエは理解したのか頷く。
「そして我々リプレスは人間を奴隷にするんだが──」
「──待ってくれ、イナメントって言う小間使いロボットが居るのに人間を奴隷にする理由はなんだ?」
ノラは少し言い辛そうにする……
「ま、まぁ、色々と奴隷にする理由はあるが一番大きい理由としてはコイツの発掘だな」
そう言ってノラは先程の長い宝石をスクエの目の前に再び置く。
「コイツは先程も説明したがノーブルメタルと言う。ノーブルメタルは鉱山で発掘するんだが、そこで奴隷の人間達に発掘をやらせる」
「イナメントにやらせれば良いじゃねぇーかよ」
「イナメントに発掘をやらせたら壊れてしまう可能性があるからな、奴隷である人間にやらせるんだ……」
そして、少し表情を歪めてノラは口を開く。
「言っては悪いが人間よりもイナメントの方が私達の中では価値が高いんだ」
「命があって考える意思のある俺達より、感情も無いロボットの方が高いのかよ……」
「……あぁ」
この世界の常識が信じられ無いのだろう、スクエは開いた口が閉じられない様だ。
「そしてもう一つの奴隷にする理由は我々リプレス達のストレス発散だな」
「ストレス発散ってどういう事だよ?」
「スクエも見たと思うが、恰幅の良い醜い男がいた事は覚えているか?」
「あぁ、あの女性の主人になった奴だよな?」
「あぁ、そうだ。そいつが女性に指示した事みたいにワザと人間を傷つけさせて反応を見て楽しむんだ──そうする事でストレスを解消するリプレスが多い」
「──最悪じゃねぇーかよ……」
「そうだ、最悪だ……」
ノラはここに来て更に表情を歪めた。
「全部のリプレスがそうするとは言わ無いが大体は人間をストレスの捌け口にする──もちろん私は違うからな?」
間を置かずにノラは人間を痛める趣味が無い事をスクエに伝える。
「それと、もう一つ人間を奴隷にする理由としてはヒューマンバトルだな」
「なんだそれ?」
「これは、リプレスが所有する奴隷同士を戦わせる大会だな──優勝すればかなりのノーブルメタルが貰えるから、こちらを目的にして奴隷を買う者も多いな」
人間同士を戦わせるヒューマンバトルに嫌悪感を感じるスクエであった。
「まぁ、アクアスの説明としてはこんな感じだが何か聞きたい事はあるか?」
「俺達人間は全員がお前らリプレスの命令を聞かないといけないのか?」
「いや、スクエはメンタルチップが無いから人間三原則は効かない──しかし他の者達には当てはまるな」
ノラは続け様に口を開く。
「しかし、第二条に関して言えば主人と奴隷という関係で無ければ発動しない──なので主人では無いリプレスに命令されたとしても特に言う事は聞かないで問題無いな」
「そ、そうか。それは良かった」
少し安心した様に溜息を吐くスクエであったがノラは険しい表情で更に言い放つ。
「しかし、実際には言う事を聞く羽目にはなるな……」
「どう言う事だ?」
「暴力だ──人間三原則の第一条により人間はリプレスにいくら酷い事されても抵抗出来ない様になっている。それが仮に殺されたとしてもな……」
「──なっ!?」
「だから結局人間は言う事を聞くしか無い状況なんだ……」
何故かノラは悔しそうにしている。
それからも質問し続けるスクエは気が付いたら夜になっていた。
「うん、大体この世界がどういう感じかは何となく掴めて来たな」
「他にも、この国──アクアスの王の話や他の国の事など色々あるが、頭が良く無さそうなスクエではこれ以上詰め込んでも直ぐ忘れそうだからまた今度の方が良さそうだな」
「あぁ、悪いなそうしてくれると助かる」
──ん? ノラの奴また俺を馬鹿にしたか?
スクエは睨み付ける様にノラを見るが可愛い表情をワザと作っているのかスクエは直ぐに目を逸らす──そしてノラはそんなスクエを見てニヤリと笑う。
「まぁ、今日は寝たまえ。色々合って疲れただろ?」
「あぁ……頭が混乱しているし、パンパンだ」
こうして、スクエのアクアスでの長い一日が終わる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます