人間三原則
こーぷ
第1章 ヒーロー見参
プロローグ
ある一人の少年が目を覚ました。
その少年は勝気な目に特長的な八重歯がある。
「こ、ここは何処だよ……?」
少年は周りを見回すが見に覚えの無い場所の様で戸惑っているのが手に取る様に分かる。
「──ッ手錠?! それに──ここは牢屋か?」
少年は自分が手錠された上に牢屋の様な場所に入れられているのに気が付き焦る。
しかし、いくらガチャガチャと手を動かしても手錠は外れない。
「お、おい──俺裸じゃねぇーかよ!?」
衣類を一切身に纏って居ない状況に少年は慌てて大事な所を隠す。
誰にも見られてないか周囲を見渡すが、どうやら大丈夫な様で一安心した様だ。
そして少年は改めて周囲を見渡すと他にも人間達が同じ様な小規模の牢屋に全裸で入れられているのが見える。
「お、おい──ここから出してくれよ!!」
必死に叫ぶが周りにいる人達は一切反応せず皆が下を向いて暗い顔をして俯いている事に少年は混乱する。
自分が置かれている現状──そして自分が何故こんな場所に居るのか考えているのか少年は目を瞑って思い出している様子だが……
「ダメだ、思い出せない……」
するといきなり周りから喧騒が響き渡たり、彼は驚く。
「皆さん、長らくお待たせ致しました──それでは只今より奴隷オークションを開始致します」
黒いタキシードに白い手袋をした老紳士が司会者の様な物言いで話すと、周りに居た人達が活気ついた様に騒ぎ始める。
その様子はまるでオークションで自身の好きな品物の前で今か今かと待ち切れずにいる大人の姿を被った子供達の様に見える。
──奴隷オークションだと? 一体何が起きているんだ?!
少年は自身が持ている、力を振り絞り手錠を外そうと試みるが──外れる訳も無くただ手首に手錠の跡が付くだけで、彼は痛みで顔を歪める。
そして、少年が捕まっている牢屋から少し離れた先にはステージがあり、老紳士が観客に向かって話しかけていた。
「それでは皆さん──こちらが一人目の奴隷でございます」
老紳士の言葉で少年の隣にある牢屋が持ち上がり自動でステージに向かっていく。
「い、嫌だ──助けてくれ!」
牢屋に入っている男性が少年に向かって手を伸ばし救いを求める。
男性の手にも同じ様に手錠が掛けられており、鉄と鉄が重なり合う音が虚しく鳴り響く。
──た、助けねぇーと!
「あぁ……あぁ」
しかし、少年はいきなり声が出なくなる。
せめて──と思い男性の牢屋に向かって手を伸ばすが意味無い事だと直ぐに理解し手を降ろす。
──まただ、また俺は……
少年に助けを求めた男の牢屋がステージに到着すると、牢屋が自動で開き、老紳士にステージの中央まで歩かされる。
ステージに上がった男は恐怖からなのか、又は全裸の為寒いからなのか震えている。
「皆様──この人間、若い上に頑丈であります。この上良いスキル、良い職業を手に入れた日にはヒューマンバトルでは敵無しで御座います」
老紳士の言葉に益々会場は盛り上がる。
──ヒューマンバトルだと……?
少年の戸惑いに関係無く話はどんどん進んでいく。
「それでは、この若く頑丈な人間をノーブルメタル──天然鉱石──10個から始めたいと思います」
この世界では価値の高い物なのか皆がノーブルメタルと言った後に個数を司会者である老紳士に叫ぶ様に声をあげている事に彼は気が付く。
「俺はこの日の為に大好きなノーブルメタルを楽しまないで生活してきたんだよ──ノーブルメタル15個!」
「何言っているのよ、私だって食べたいのを我慢して必死に集めて来たんだから──ノーブルメタル18個!」
どうやら、ノーブルメタルとは彼等達に取っては趣向品の様であり高価で価値のある物の様だ。
少年は皆が夢中になっている今こそ逃げるチャンスだと思ったのか、必死に逃げる策を考える。
その後も値段は跳ね上がっていき、とうとう男性の買い手が決まったのか、老紳士が弾んだ声で叫ぶ。
「おめでとうございます──それではノーブルメタル45個にて落札になります」
老紳士は白手袋越しに木のハンマー的なのを持ち木の机に二度──ドンドン──と叩いた。
そしてステージで見世物にされていた男性は再び牢屋に戻され、また自動でステージから裏手に移動するのであった。
「皆様盛大な拍手をお願い致します」
老紳士の言葉に参加者全員が手を鳴らし落札した事を祝っていた。
「ではでは、まだ一人目でございます。残りの人間達も粒揃いでございますので──どうか皆様方最後までお楽しみ下さい」
少し芝居がかったお辞儀をした後に二人目の人間が牢屋ごとステージに移動するのが見えた。
そして二人目の商品はどうやら女性の様で全裸による恥ずかしさのあまり大事な所を必死に手で隠そうとするが──オークションの参加者達は待ってくれはしなかった。
「それでは奴隷二人目は女性になります。こちらの女性は若いだけあって肌艶がとてと良いです。愛玩用に買うのもよし、ストレス発散する為に買うのも良いですね。それではこちらの人間をノーブルメタル5個から初めていきたいと思います」
女性の方はあまり人気が無いのか先程の様にノーブルメタルの個数がドンドン増えていく事は無く緩やかに増えていった。
「現在、ノーブルメタル13個まで出揃いましたが他にいらっしゃいますか?」
老紳士の質問に誰も応える者が居ない事を確認しハンマーで机を叩く。
「それでは、ノーブルメタル13個で落札とさせて頂きます」
今回勝ち取った者はでっぷりと丸々太った中年であった。
落札した事が嬉しかったのか、身体が笑う度に呼応し、肉が揺れる程の巨漢である。
「い、いや……あんな奴、私は……」
自身の買い手を見た女性は、か細い声を上げて否定する──だがそれを聴いている者は居ない。
「では次に一つ目のメインディッシュを皆様にご紹介致します」
老紳士が声色を変えて前文句を語り始める。
「次に紹介致しますのは、とても珍しく黒髪、黒目の人間でございます──また反抗的な目、キバの様に生えている八重歯が特徴的なのでコレクターの方々も、とても気にいる事でしょう」
老紳士の言葉に今まで無い程の盛り上がりを見せる客席。
「それではステージに登場して貰いましょう」
老紳士の言葉と共に少年の牢屋が動き始める。
そして、牢屋が動いた事により次は自分の番だと知り、彼は焦る。
どうにか抜け出せないかと思い、牢屋内で暴れて見た様だが牢屋が壊れる事は無かった……
必死の抵抗も虚しく少年が入った牢屋はどんどんステージに向かっていくのであった。
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