おやっ、風が吹いた
金色の麦畑
第1話◇風が吹いた
ダイニングの椅子に座り大きな掃き出し窓から外を見ると、境界線の低い塀越しに隣の家の裏庭が見える。
そこにはキンモクセイの樹が植えられていて、5月の柔らかい黄緑色の葉が風に揺れた。
サワサワサワ……
閉じられた窓を抜けた聞こえないはずの音が聞こる。
ああ、風が吹いたんだ。
夕方、空がどんよりして空気が湿り気を帯び始めた。
パラパラパラパラ
給湯器の室外機を覆うトタンに雨粒が当たった。
パラパラッパラパラッパラパラパラパラッ
落ちてきていた雨粒が風に煽られてトタンに強くぶち当たっている。
パラパラパラパラ
風がやんだらしい。
音、空気の振動で見えない風を感じた。
空気の流れによって目に見えるものが揺れたから風が見えた。
風が吹いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます