第503話 過去の出来事の再配置による体感的ギャップの消失について

 このエッセイは、一つの文書ファイルに五十話まで保存していますが、この間新しいファイルを作ったと思ったら、また次のファイルになっていて、月日が経つのは早いものだなと感じました。


 しかしながら、本当は月日が経つのが早い、と感じているわけではないかもしれません。いや、そう感じると感じているのだから、感じていることに変わりはないのですが、それがこの体感の本質ではないということです。


 以前に新しいファイルを作ったときと、今新しいファイルを作ったときの、その二つの時間を繋げることで、その途中の過程が省略され、あたかも二つの時間が隣接するかのように捉えられ、それで、あっという間だな、と感じるわけで、隣接していたらあっという間なのは当たり前のことです。


 けれど、本当は隣接などしていない。たとえば、昨日のことを思い出して、次にその前の日のことを思い出して、それを何度も繰り返して、そうして、以前に新しいファイルを作ったときへと辿り着けば、あっという間だと感じることはない、とは言い切れませんが、最初の場合よりは感じなくなるのではないでしょうか。


 人間は、あとから都合の良いように過去の出来事を配置できるみたいです。

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