第83話 無駄なものの役目

 無駄なものをあえて残すと、安定的になることがある。


 たとえば、文章を書くときに、本当に必要な単語とそうでないものを分けて、必要でない単語を完全に削除すると、却って読みにくくなる。ほかにも、料理を作るときに、本当に必要な食材とそうでないものを分けて、必要でない食材を完全に削除すると、同じ結果になる。


 一見すると無駄に感じられるものでも、きちんとその中で一定の役目を果たしている。それは、無駄、という役目である。無駄なものは、削除することも可能だが、無駄なものは「無駄」という役目を果たしているのだから、削除してしまうと、それによって齎される効果が消えたり、また、ほかのものが代わりにその役目を果たさなくてはならなくなる。


 無駄なものは、あくまで現時点では「無駄だ」と感じるものであり、それをあとで活かせば、無駄ではなくなる。ある組織の構成員の内、時期を特定すれば、その時期には一生懸命機能している人間と、あまり機能していない人間が出てくるが、時期が変われば、その関係性は逆転するかもしれない。


 無駄なものを完全になくそうとする行為は、やるだけ無駄である。

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