第79話 格言の不思議
格言と呼ばれるものは、最初に見たときはなるほどと思えるのに、あとでじっくり考えてみると、どうしてそう思えたのか疑問に感じるものが多い。
たとえば、「努力は報われる」という格言があるが、これをぱっと見れば、たしかにその通りだと思うだろう。しかし、報われるとはいったいどういう意味だろうか。「報う」という動詞を名詞形にすれば「報い」になるが、報いとは、一般的にマイナスのイメージを伴った言葉である。「犯罪を犯したのなら、それ相応の報いを受けるべきだ」みたいな使い方をすることからもそれが分かる。この「報い」という言葉から分かるように、「報う」とか「報われる」といった動詞には、「それ相応の」といったニュアンスが含まれている。というわけで、「努力は報われる」という格言は、「努力すれば、それ相応の結果が返ってくる」という意味になると考えられる。「それ相応の結果」なのだから、一生懸命努力すれば、それに見合った素晴らしい栄光を手にできるが、一方で、怠けて少ししか努力しなければ、ちょっとした利しか得られない、ということを意味している。だから、「努力は報われる」という格言は、プラスの立場ではなく、中立の立場に立っているといえる。
この説明を聞いて、なるほどと思う人はいるだろうか(反語)。
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