第66話 相手も自分と同じだと思える不思議
味覚や嗅覚は共有できないものなのに、どうして同じ味や匂いを感じていると思えるのか、甚だ不思議である。
たとえば、「この蜜柑、甘いね」と一人が言うと、もう一人が「うん、甘いね」と応えたりするわけだが、前者が言った「甘い」と、後者が言った「甘い」が同じであるとは限らない。むしろ違う可能性の方が高いといえるかもしれない。そもそも、人間はどうやって「甘い」という概念を獲得するのだろうか。赤ん坊のとき母親から果汁を食べさせてもらいながら、「甘いね」と繰り返されたことで、なるほど、これが甘いということなのか、と理解したのかもしれないが、それでは、果汁を食べさせながら「辛いね」と繰り返したら、その子どもは成長しても蜜柑を辛いものとして認識し続けるのだろうか。
人間は他者と一緒に食事をするが、それも、「美味しい」という概念がある程度共通していないと成しえられない。自分が美味しくても、相手が美味しくなかったら、コミュニケーションが成立しづらくなるからである。自分は不味いものを食べているのに、相手は美味しいものを食べていたら、なんとなく嫌な気持ちになるだろう。
自分は、味覚音痴なので、何でも美味しく感じられるが。
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