第3話「友人との出会い」

 ダクネス視点に戻ります



「いやー、しっかしダクネスはスゴいねぇー。あたしが何度も切りつけないと倒せないゴブリン達を一撃で仕留めちゃうとか」


「いや、そんなこと無いぞ。あれはクリスの作戦あってこその結果だ。第一、私一人では攻撃が全く当たらん。むしろ、今回はクリスのおかげだ」


 ゴブリン討伐の帰り道、私とクリスは今回のクエストについて談笑していた。


「そ、そうかなぁー。そういうことにしとこっか!」


「うむ」


 初めてではないだろうか、こんなにもクエストがうまくいったのは。以前、他のパーティーを組んでクエストに行った時には、私の攻撃が当たらなすぎて前衛の壁としては役に立ったのだが、敵を倒せないので大勢の敵の前にしては、流石に防ぎきれずに後衛にまで攻撃が及んでしまった。

 撤退する他なく、クエストは失敗に終わってしまった。

 このようなことを何度も繰り返している内に、ギルドでも有名になり、私とパーティーを組んでくれる連中はいなくなってしまったのだ。

 しかし、なぜクリスは私とパーティーを組んでくれたのか。私はギルド内でも攻撃の当たらないポンコツクルセイダーと有名なのだが。


「な、なあ、クリス?なぜ私とパーティーを組んでくれたのだ?これでも私は、攻撃の当たらないポンコツクルセイダーなどと、ギルド内では有名なのだが...」


「ん、そうだったの?あたし、最近アクセルに来たばっかだし、そんなこと知らなかったよ?」


「うむ、そうなのか?けれど、私が攻撃の当たらないことを先に説明したが、あの時にパーティーを組むのを断ることも出来たのだぞ?」


「い、いやいや、自分から声かけておいてそんなことはしないよ!失礼過ぎでしょそんな人!」


「ま、まあ確かにそうなのだが。けれど、私が攻撃の当たらないことに驚かなかったのか?自分で言うのもなんだが、こんなに使えない前衛職はなかなかいないと思うぞ?」


「まあ、最初は驚いたけど、なんとかなるかなぁーって...(どっちかって言うとドMな方に驚いたよ...)」


 右頬を掻きながらそんなことをクリスは言った。目が若干泳いでる気がするが。私に対して気を使ってくれているのだろうか。それなら彼女にも申し訳ない。

 よし、決めた。せっかく組んでくれたパーティーメンバーだが、彼女に迷惑を掛けたくない。今回限りにしてもらおう。クリスにとってもそちらの方が好都合に違いない。

 なんせ、攻撃の当たらない前衛職など、使い勝手が悪すぎる。彼女は盗賊職、ダンジョン攻略には必須だ。その割には担い手が少ない貴重な職業だ。私なんかと組むよりも断然そっちの方が良いだろう。


「なあ、クリス。このパーティーは「ねえ、ダクネス?明日もクエスト受ける?」


 えっ?今なんて?


 驚いたのが顔に出てしまったのか、クリスの不思議がっている。


「ダクネス?ねえ、ダクネス聞いてる?明日もクエスト受けるの?」


「えっ?ああ、受けようかと思っていたが...?」


「なら、明日はコボルト討伐にでも行こうよ!ゴブリンも楽勝だったけど、油断は禁物ってことで、弱いコボルト討伐に行こ...うよ?」


 クリスの声が尻すぼみになっていく。なぜかクリスは狼狽え出した。


「えっ、えええ?どどど、どうしたのダクネス?」


 なぜいきなりクリスは狼狽えているのだ?


 そう思った瞬間、自分の頬を熱いものが伝っていくのに気がついた。

 嬉しかったのだ。今まで、クエストに行くたびに離れていかれ、一人になってしまっていた。話すことはあったりもしたが、一緒に冒険に行ってくれはしなかった。どこか、満たされなかった。だが今回、次も行こうと誘われた。こんなことは初めてだ。

 だか、聞き間違いかもしれない。私は涙を拭い、恐る恐るクリスに尋ねた。


「どうして、私ともう一度冒険に行こうとしてくれるのだ?」


「えっ?そりゃあ、もうあたし達は一緒に冒険した仲間だからだよ?それにあたし達はもう友達だと思うんだけれど、また一緒に冒険に行きたいなーって思ってさ」


「何度も言うが私は攻撃が当たらないぞ?それなのにどうして...」


「あたしとダクネスが組めば良いコンビじゃない?あたしが拘束して、ダクネスが倒す。完璧だと思うんだけれど?」


「こんなことを言われたのは初めてだ。まさか、こんな日が来るなんて、ああ、エリス様、ありがとうございます。冒険者仲間が欲しいと言っていた私の願いを聞き入れてくださったのですね...」


 私は片膝をつき、エリス様に祈りを捧げる。


「(ええ、ダクネス。貴女の願いを私が可能な限り、叶えてあげますよ。それに、冒険者としての生活もなかなかに楽しいものですから)」


 ギルドに着いた私達は、報酬を受け取り酒場で夕食を取り、ネロイドを飲みながら、クリスと共に楽しい時を過ごした。


 今晩の酒はそれはもう美味しかった。


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