第3話 幼き聖女は成長する
俺がエドワードを敵視し始めてから二年が経ち、俺は三歳になった。
三歳になっても基本的な生活は今までと変わらずに食っちゃ寝生活を送っていたのだが、エレノアは聖女としての使命感か最近は部屋の掃除を手伝うように言ってくるようになった。
「ティアも将来は聖女になるのですから、欲に溺れてはなりませんよ」
などと供述する聖女様。だが三年間近場で監視していた俺は知っている。この聖女様、夜になると欲に溺れ捲ってるのだ。エレノアはもはや【聖女】ではない。性女だ。
もし、こんなことを本人に伝えたらどうなるのか気になるが――――
「欲に溺れるのは聖女の恥ですッ!」
そっと胸にしまっておこう。触れたら国王を殺す前に殺されかねない。それだけは回避しなくては……!
それはさておき、俺がエレノアに従うとエレノアは本格的に俺を聖女にするための試練を与え始めた。
聖書や書物の朗読、字の読み書き、畑仕事にお墓掃除、主神イーリス様への御祈りなど。本格的に聖女が行うものから何となく聖女が行うであろうものまで、全てを教わり始めた。
幼少期のエレノアはよくコレに耐えられたなと、心の底から感心した。
書物漁りと御祈りは精神的に潰してくるし、畑仕事とお墓掃除は体力的に潰してきた。
そんな俺は聖女のお仕事を始めることわずか1週間足らずで音を上げることとなった。
「まだ三歳に成り立てだし、畑仕事は無しにしたらどうだ?」
「そうですね。とりあえず熱を冷ましてから本人に聞いてみましょう」
死ぬほどツラい労働に課された俺は熱を出して寝込んでいるが、その真横で二人の話声が聞こえた。
「なあ、敬語は本当に――――」
「なおりません」
「そ、そうか……」
英雄であろうと聖女には勝てないのかよ。
三日後、熱から完全に解放された俺はエレノアと話し合いにより、畑仕事は取り止めとなった。
代わりに聖書を暗記する訓練が始まってしまったのだった。
◇◇◇
それから二年が経ち、明日、俺はついに五歳となる。
そして、この世界では次期聖女が五歳になる日は新聖女聖誕祭と呼ばれる祭りが各国の王都で行われるのだ。
「聖女規定目録第二十五項目」
「聖女たるもの、困ってる人を見つけた場合相手がどのような人であれ、必ず救済の手を差し与えなければなりません」
「神聖書物第三巻五百七頁三行目より一行」
「天と地が消えるその日まで、律法から逃れることは出来ず、罪を犯したものは懺悔し、規定の方法で償うことで罪人はその罪から解放す」
今日、俺は馬車に揺られながらエレノアに聖書物暗記テストをさせられている。もちろん俺とエレノアの近くに書物などない。
両者完全暗記しているのだ。その数、既に二十冊を越えている。自分でもよく覚えられたものだ。これも聖女としての力なのか?
「合格です」
「ありがとうございます」
ここで喜ぶとお叱りを受けるのは既に知っている。聖女がして出して良いのは愛想笑いと涙だけだと言っていた。
「(アイツら俺の家族だよなッ!? 壁が見えてきたんだがっ!?)」
王都滞在中は王宮で過ごすことになっている。この機会を逃すと次に王都へ来るのは
だから、この王都滞在期間で国王に復讐しなければならないのだ。それに
「ティア、そろそろ王都に入るぞ」
「はい、お父様。楽しみですね」
まったく、あのゴミを殺してやるのが楽しみで仕方ないなッ!
「ティア、黒い何かが見えますよ」
「きっ、気のせいです!」
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