超神化
「当ててみせる!」
ロアはまるでただ1発の弾丸になった様に敵を貫き、激しい爆煙が上がる。
手応えはあった。確実に仕留めた。
後は爆煙が晴れて効果を観測するだけだ。
爆煙が徐々に晴れてきた。
すると、一気に爆煙が吹き飛ばされたと同時にロアは感じた事もない威圧感に体を押される。
「何だ!」
そこには蒼く輝く7対の光の翼を生やし全身から迸る様に蒼い光を放つネクシレウスが存在している。
そして、アリシアの背中からも7対の光の翼が生え、それはまるで天使を彷彿とさせるシルエットをしていた。
翼が羽ばたく度に蒼い光の羽が空中に舞い、光と共に淡く霧散する。
蒼い天使はまるで高みから見下ろす様にロアを見つめる。
その視線はまるでこちらの不浄の一切を引き裂く様な綺麗過ぎる眼差しだった。
あまりの清潔さに居心地の悪さを感じる。
まるで空間一帯がロアと言う不浄な存在を許さないと言っている様な錯覚を覚える。
「超神化、完了。システムクリア。出力安定域。ヴァル行ける?」
アリシアの右肩の乗っているヴァルは「キュー」と嘶き、問題ないと言っている。
超神化
かつて、亜神になった際に得ていたが使わなかったエクストラスキル”神化”の上位スキル。
”戦神解放”とも似たスキルだが、少し違う。
その能力は以下の通りである。
神の肉体を降臨させる。
神の潜在能力を解放する。
かなりアバウトなスキルだが、悪魔との戦いがいつ起こるか分からない時だったからこそ、早急に仕上げたかったスキルの1つだ。
ロアがここまでやるとは思わなかったが薄々嫌な予感がしていたのもあり、アリシアと同化したオリジンの力を行使してスキルのアップグレードを行った。
呪われた事で上位スキルの構成が難しいとも思っていたが、ヴァルからも力を借り受け、何とかこのスキルを完成させた。
また、このスキル使用時もヴァルから力を融通して貰う事で神化時よりもスキル使用時間が延長している。
更に”超神化”した事でアリシアの周辺空間が高次元化しており、この空間内なら現実離れした戦闘も可能となっている。
「ぶっつけだったけど、上手くいったね。ありがとうオリジン」
「別に良いよ。役に立てたなら嬉しい。でも、力を出せるのは精々、5分だよ」
「5分あれば充分!」
アリシアはネクシレウスの翼に変化したスラスターを噴かせた。
翼が羽ばたくように舞い、蒼い羽根の落ちるように空中にルーンスラスターと高濃度のWNが宙に舞い、莫大な推力を得る。
その瞬間、彼女は消えた。
ロアは消えた彼女の気配を探ろうとする。
だが、気づいた時には彼は後ろから叩きつけられていた。
そのまま吹き飛んだロアは姿勢を直そうとするが気づくとまた、後ろから強い蹴り一撃を叩き込まれた。
蹴りから放たれた斬撃がヴァイカフリの右腕を捥り取る。
更に後方に吹き飛ばし、背後に回り込み、刀による斬撃を加えて左の上下翼を切り裂く。
そして、右脚で真っ直ぐ蹴り飛ばした。
「速い!しかも、まるで追えないだと!」
レーダー、気配、視覚全てを網羅しても彼女の存在が全く観測できなかった。
姿は見えないが、確かに実在する敵がロアの追撃を許さず次々と攻撃を繰り出す。
「聖炎よ!我が敵を焼き尽くせ!
蒼い長槍がネクシレウスの背後から飛び出て1本の槍が100本の蒼炎を纏った槍に代わり、時間と空間の一切を無視してロアの機体に降り注ぐ。
ロアの機体を既に再生しようとしていたが、再生速度を上回る速度で機体の翼や肢体を抉り取り聖炎が有機的な機体を燃やす。
ロアは更にそれを上回る再生を行おうとしたが、槍の効果により偽神や偽神の眷属の回復を阻害する。
確かに回復を見せたが、先ほどのような回復は無く右足は半壊、左右の翼も大半が捥ぎ取られる。
「くそ!調子に乗るなよ!見えないと言うのなら空間全てを覆えば良いだけの話だ!」
ロアは再生能力を翼に集結させ、左右の翼の7割を回復させる。
そして、翼を大きく広げ漆黒の翼の全面から”崩壊”を纏った弾丸を全方位には発射した。
「
避けようと思えば、弾幕の合間を縫って避けられる。
だが、この攻撃を利用すれば、かなり優位になる。
アリシアは右腕に丸みを帯びた楕円形の漆黒の盾を構え”崩壊”を纏った弾丸を受け止める。
盾で攻撃を受け止める姿勢を取った事で動きが止まったアリシアをロアは見逃さない。
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