旅する子供.3
翌朝から2人は南を目指して歩いた。そこに彼らの故郷、ラズの暮らす街があるから。どれくらい遠いかはわからないけれど、少なくとも方角だけは合っているのを、昨夜の星の位置で2人は確認をしていた。あとは近くに行けば、風の匂いや土に問えばいいのである。
半日ほど歩くと、湿地まであった高原の景色は一変し、周囲は砂だらけの砂漠になっていた。
「水筒になる皮袋を用意しておいてよかったね」
砂の地下深くを流れる水の流れの音を聞き、それを呼び出して水を入れるために取っておいた皮袋に水を満たしながらスフィヤが言う。
「何度も言っただろう。旅をしていれば予測できないことばかりだ。わからないということだけがわかるようになる。準備は余分にしたっていいくらいだ」
「その割にいつも軽装だし、荷物少ないよね、父さん」
「なくても困らないものもわかってくるんだ」
「僕もそんな風になれたら格好よかったのに」
「お前も何も持ってないじゃないか」
「ベルトで体に括り付けてるんだよ」
「それを言ったら父さんも同じだ」
「あっ、ほらもう水が満杯だ!」
「零しても砂に吸われて帰っていくだけだ。粗末にするわけじゃない。焦らなくていい」
焦るスフィヤに声をかけるティファン。息子から視線を外すと、はるか遠くに要塞のようなものが見えた。
「スフィヤ、見えるか」
「何が?……何だ、あれ……」
「要塞なら厄介だな。万が一向こうからこちらが見えていれば、水を汲んでいるようには見えないだろう。爆発物でも仕掛けてると思われたら面倒だ」
「近くに行ってみようか。ただの街かもしれないよ」
「街にしては……なんというか、重厚だな。だがそれがいいだろう。向こうの動きも知っておきたい。そもそも一体何なのかもわからないしな」
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